自動車のメートル原器、マツダ・ロードスター【日本版編集長コラム#50】

公開 : 2025.10.05 12:05

AUTOCAR JAPAN編集長ヒライによる、『日本版編集長コラム』です。最近乗ったクルマの話、取材を通じて思ったことなどを、わりとストレートに語ります。記念すべき第50回は前回に続くマツダ話として、ロードスターがテーマです。

なぜかこの2年間ご縁がなく

EV用バッテリーを充電するレンジエクステンダーとしてロータリーエンジンを搭載した『マツダMX-30ロータリーEV』にじっくりと試乗した、というのが前回までのお話。続いて取材したのは、『マツダ・ロードスターS』である。

ちょうど2年前となる2023年10月5日にマイナーチェンジが発表され、翌年より販売がスタートした現行ND型ロードスターだが、これまで触れる機会がなかった。個人的に2015年の新車発表からひと通り取材していて、カー・マガジンの誌面を中心に何度原稿を書いたか数え切れないほどだが、なぜかこの2年間ご縁がなく……。

今回ようやく取材することができた、マイチェン版『マツダ・ロードスターS』。
今回ようやく取材することができた、マイチェン版『マツダ・ロードスターS』。    平井大介

というわけで、待望の『新型』ロードスター取材となった次第。乗るべきはやはり一番ベーシックなモデルということで、6速MTのみが設定される『S』を選んだ。

乗り込んで最初に気がついたのは、8.8インチのセンターディスプレイにナビゲーションが搭載されていることだった。それまでのSはナビが付かない小さなオーディオディスプレイだったが、コストを考えても作り分けるほうが効率悪いということだろう。

その結果、車重は1100kgと1トンをオーバーしてしまったが、それでも現代のクルマとしては相変わらず軽量な部類となる。ナビがついたとはいえ、現代的な装備はなるべく省かれているからだ。

気がついたところでは、ドアノブ横のボタンを押すことでロックが解除される機能、バックギアに入れた時に表示されるバックモニターなどがなく、エアコンも温度設定がないマニュアルタイプだった。

しかし、これでいい。必要ならば、装備が充実した上級グレードも選ぶことができる。それよりも大事なロードスターとしての金科玉条を一番理解できるのが、ベーシックなSグレードというわけだ。

クルマの大きさが視覚的に伝わってくる

クルマを真横から見ると、ドライバーが車両のほぼ真ん中に位置していることがわかる。そこを中心に旋回することの気持ちよさは、スポーツカーにおける運動性能の基本中の基本を見せられているかのようだ。

小さなクルマではあるが、コクピットからの景色はボンネットフードの大きさがわかりやすく、クルマの存在感が視覚的に伝わってくる。サイドウインドウの位置が低いことで開放感があるのもロードスターならではで、他の多くのオープンカーは剛性や安全性を重視してか、高い位置にあることが多い。

サイドウインドウの高さが低いことが、ロードスターの開放感に繋がっている。
サイドウインドウの高さが低いことが、ロードスターの開放感に繋がっている。    平井大介

シートに座ったまま簡単に開けることができるソフトトップ。インテリアにも使用されたボディ同色のパネル。手首だけで操作ができるショートストロークのマニュアルシフト……。

うおおおおおおおおおおお!!!!

……すみません、取り乱しました。しかし改めてこうして原稿を書いていて、やはりロードスターは最高だと思う。

これまで私は、『今新車で購入すべきクルマは、アルピーヌA110とマツダ・ロードスターの2台』と何度か書いてきた。もちろん、他にも幸せになれるクルマはたくさんあるが、A110は次世代で電動化されるのが確定的だし、ロードスターもどうなるかは不透明。しかし今ならこんなにも純粋なスポーツカーを新車で購入できるのだから、無理してでも手に入れるべき……という意味である。

というわけで、年に一度は必ずやってくる『ロードスター欲しい病』が今回も発症したのであった。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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