970ccの4スト4気筒 スズキSC100(セルボ) 英国版中古車ガイド 英国ライターのお気に入り

公開 : 2023.06.07 08:25

軽自動車が550ccだった時代に生まれた初代セルボ。欧州には1.0L版が輸出されました。アナログな魅力を英編集部が振り返ります。

英国人ライターに愛された小さなスズキ

古くからAUTOCARをお読みいただいている英国人なら、ライターの故LJK.セトライトをご記憶かもしれない。技術的な知識で右に出る者はおらず、ブリストルを好み、多くのクルマ好きから愛された紳士だった。

そんなセトライトは、スズキSC100のオーナーだった。短い休暇を楽しむために購入したそうだが、周囲へ大きな影響を与える発言を残しつつ、結果的に気に入って長い期間所有していた。

スズキSC100(セルボ/1979〜1982年/英国仕様)
スズキSC100(セルボ/1979〜1982年/英国仕様)

筆者も、彼から影響を受けた1人だった。本人から直接、SC100を購入したほど。10年落ちくらいだったが、それから7年間、筆者も楽しく運転していた。その後に手放してしまったのだが、今でも胸が苦しくなるほど後悔している。

個性的な小さなスズキは、英国ではすっかり貴重な存在になってしまった。現存する例は、極めて僅かだ。

SC100の起源は、1971年に発売された日本の軽自動車、フロンテ・クーペ。かのジョルジェット・ジウジアーロ氏が、2ドアボディのデザインを手掛けている。目を細めて遠くから見れば、ポルシェ911に見えるかもしれない。好意的な印象を持つ人には。

フロンテ・クーペの全長は2995mmと短く、ボディの後方に356ccの2ストローク3気筒エンジンを積んでいた。1977年に軽自動車の規格が変わり、全長は3190mmへ伸ばされ、エンジンは539ccへ拡大。セルボへ名前が改められている。

英国仕様は970cc 4ストローク4気筒

そのスズキ・セルボがグレートブリテン島の土地を踏んだのは1979年。SC100というモデル名が与えられ、ウィズキッドという愛称を得ていた。

英国の環境に合わせて、エンジンは970cc 4ストロークの4気筒へアップデート。最高出力は47psしかなかったが、比較的低い4500rpmで発揮した。最大トルクは8.4kg-mと充分に太く、2500rpmで達した。

スズキSC100(セルボ/1979〜1982年/英国仕様)
スズキSC100(セルボ/1979〜1982年/英国仕様)

4速マニュアルのギア比が離れており、活発に運転するには相当な唸りを放ったものの、車重は630kgと軽量。軽快さを味わわせてくれた。

メーカーが主張した最高速度は132km/hと、当時としても低かった。とはいえ、追い風の状態でドライバーが勇気を奮い立たせれば、それ以上速く走れることをオーナーは密かに楽しんだ。もっとも、一般的な交通環境でもそれなりの勇気は必要だったが。

タイヤの空気圧を調整し、フロントサスペンションのキャンバー角を最適化すれば、ある程度はカーブも攻められた。しかし、予期せぬ挙動に面食らう場合も珍しくなかった。特性を学ぶには、時間が必要だった。

42:58というリア寄りの重量配分で、加減速時のピッチングが大きく、ブレーキング時は特に不安定に。乗り心地も独特。小さなリアエンジン車らしい、特徴といえたけれど。

筆者はかつてロータリー交差点の入り口で、意図せず360度ターンを決めたことがある。幸い歩行者はおらず、他のクルマとの接触もなかったが、肝を冷やした体験だった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ピアソン

    Mark Pearson

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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