ルノー・オーストラル 詳細データテスト 上質なパワートレイン 広く質感の高い室内 4WSは要改善

公開 : 2023.07.29 20:25  更新 : 2023.08.11 18:20

走り ★★★★★★★★☆☆

ルノーのE−テック・ハイブリッドシステム独自の作動の仕方によって、オーストラルは発進加速が奇妙なクルマになっている。というのも、スリップさせるクラッチやトルクコンバーターがないので、常に電気モーターで発進する必要があり、そのときにエンジンはニュートラルになっているからだ。

モーター出力が68psしかなく、車両重量が1696kgあるSUVだという点を考えると、発進加速はややスロー気味だ。

複雑なパワートレインは、全開加速時に奇妙な挙動を生むが、日常使いでその癖が出るようなことはまずない。ただ、もう少し加速性能は高いとうれしい。
複雑なパワートレインは、全開加速時に奇妙な挙動を生むが、日常使いでその癖が出るようなことはまずない。ただ、もう少し加速性能は高いとうれしい。    MAX EDLESTON

20km/hくらいまでは、エンジン回転はアイドリング程度で、駆動力を発揮するのはそれより速くなってから。ギアチェンジが必要になってくるのは70km/hあたり。ギアボックスがノンシンクロで、スターター/ジェネレーターが入念に回転合わせをしなければならないので、変速は0.5秒くらいかかる。その間はふたたびモーターが仕事をする必要があり、加速は明らかに弱まる。

そこから120km/hくらいまでは、ふたたびスマートに加速する。そこでまたシフトチェンジするが、加速が体感的には1.5秒くらい衰える。全開加速では1段飛ばし、トップに入ったのは174km/h。ここではモーターが回転速度を維持できないので、ややスローダウンする。そこで少しの間を置いてまた加速し、180km/h目前でリミッターに当たる。

すべてがそこはかとなく奇妙なのだが、普通に走っている分にはそれに気づくことはないのがありがたい。全開にしない限り、モーターのパワーはシフトチェンジの際に途切れるエンジンパワーを十分に補って、そうとは気付かせないくらいスムースに完了してくれる。

さらにエンジンはすばらしく洗練されていて、よほどハードに加速しなければ3気筒のノイズや振動も感じさせない。例外は、バッテリーを急いで充電するためにコールドスタートする必要がある場合のみだ。その後に多少はガラガラいうが、それもほんの数秒くらいだ。

フルハイブリッドとしては大きめな1.7kWhのバッテリーを積んでいるので、EVモードの航続距離は長めだ。市街地走行を、苦痛ではなく快適なものにしてくれる。

全般的に見れば、パワートレインの洗練度は競合するキアをはじめ、トヨタ日産ホンダさえも上回る。にもかかわらず、0−100km/h加速タイムが公称値に0.5秒も満たず、キア・スポーテージより遅かったのは残念だった。

ドライバーはシフトセレクトを行う余地が一切ないのだが、ステアリングホイールの裏側にはパドルがある。これは回生レベルを選択するためのものだが、それを可能にしたのは大きめのバッテリーと力強いモーターだ。減速度はEVほどではなく、ワンペダル運転モードはないが、操作するだけの価値はある。ブレーキペダルのタッチはややソフトで、反応は過敏なところもあるが、すぐに慣れる程度のものだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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