ルノー・オーストラル 詳細データテスト 上質なパワートレイン 広く質感の高い室内 4WSは要改善

公開 : 2023.07.29 20:25  更新 : 2023.08.11 18:20

操舵/安定性 ★★★★★★☆☆☆☆

テストしたアイコニック・エスプリ・アルピーヌの諸元表に目を通すと、主流のクロスオーバーより風変わりなところが見つけられる。このクラスで、リアサスペンションがマルチリンクなうえに、四輪操舵までついているクルマは一般的ではない。

残念ながら、このオーストラルにグレード名が示唆するようなアルピーヌのスピリットは感じられなかった。ステアリングは非常にクイックで、ロックトゥロックは2.3回転以下。しかし、フィードバックや、押し返してくる手応えはまったくないので、フィーリングはきわめてナーバスだ。

タイヤのグリップは文句なしだが、クイックなステアリングはすぐに切りすぎてしまう。手応えの軽さと、直観的ではない4WSが原因で、自信を持ってドライビングできない。
タイヤのグリップは文句なしだが、クイックなステアリングはすぐに切りすぎてしまう。手応えの軽さと、直観的ではない4WSが原因で、自信を持ってドライビングできない。    MAX EDLESTON

切りすぎてしまいやすいので、路上での位置決めは難しい。その感覚をさらに悪化させるのが、SUVらしく高めの着座位置と、セッティングの詰めがやや甘い四輪操舵システムだ。

ポルシェ911のようなスポーツカーや、レンジローバーBMW iXのようなSUVに備わるベストな4WSなら、ドライバーにその存在を意識させるようなことはない。実際よりも車体が小さく、やや敏捷性も高いと感じさせてくれるものだ。

オーストラルの4コントロールと呼ばれる4WSシステムは、コーナーによってはナーバスなフィールを増し、それ以外では横走りするような感覚をもたらす。

たしかに、回転サークルが小さくなり、取り回しはしやすくなる。とはいえ、システムのレスポンスが同調してくれないので、ナチュラルには感じられない。タイトなラウンドアバウトに入ると、クルマがオーバーステア状態になりはじめたように感じられ、リアエンドが振り回される。後輪操舵の効き具合を走行モードのメニューで調整できるのはおもしろいギミックだが、エンジニアがするべき仕事をやらされていると思えてしまうのも正直なところだ。

しばらく経てば、特定のシチュエーションに応じてさまざまな走行モードを設定することができるだろうし、シャシーのバラバラなリアクションにも慣れるだろう。235幅のミシュラン・プライマシー4のおかげで、グリップは十分にある。しかしながら、オーストラルのシャシーが不思議なほど満足できないことは変わらない。

ファミリーカーのクロスオーバーに、ホットハッチのようなハンドリングを期待することはないだろう。それでも、ライバルたちがもっと直観的で自信が持てるようなフィールをどうにか生み出している。走り好きのドライバーであっても、そうでなくても、誰もがそのほうがいいと思えるはずだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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