ラリーとレースの二刀流 フレイザー・ナッシュ・ミッレミリア モダンな運転体験 後編

公開 : 2023.09.02 17:46

かなりモダンなドライビング体験

コクピットは自然に身体へ馴染む。ダッシュボードは薄く、膝が触れることはない。身長が高めの筆者でも、楽に足を伸ばせる。モータースポーツを前提としているだけに、ペダルの位置は近いものの、決して狭いとは感じない。

正面には細いリムのステアリングホイールが伸びている。その奥には、速度計と回転計が綺麗に並ぶ。左右対称の眺めが心地良い。エンジンを始動する前から、満ち足りた気持ちになる。

フレイザー・ナッシュ・ミッレミリア(1952年式/英国仕様)
フレイザー・ナッシュ・ミッレミリア(1952年式/英国仕様)

筆者がブリストルの2.0L直列6気筒エンジンに接した機会は限られるが、かくして、想像以上に素晴らしいものだった。3基並んだソレックスキャブレターは、冷間時でも盛大に空気を吸い込み、4000rpm以上では惚れ惚れするようなサウンドが充満する。

背中がシートに押し付けられるような勢いはないものの、トルクが太く、滑らかにパワーが放たれる。操縦系には明確で正確な感触が伴い、ドライビング体験はかなりモダン。1930年代にルーツを持つモデルだと感じさせない。

サーキットを走らせれば、若々しい印象は更に強まる。同年代のジャガーより、1950年代後半のロータスに近いようにすら思える。

車重は約840kgと軽く、シャシーのバランスも素晴らしい。ステアリングホイールはダイレクトで繊細。ブレーキも、不自然な偏りがなく頼もしい。公道の速度域では、限界領域まで迫ることが難しい。

ステアリングを握れば価値へ深く納得

操縦性は、まさにお手本通り。オリジナルの状態が保たれ、ミッレミリアの乗り心地は比較的ソフト。サーキットやラリーステージへ向かう早朝の郊外の道では、本番と同じくらい、爽快な時間を謳歌できるに違いない。

もし何か不満を探すなら、トランスミッションが挙げられるかもしれない。それでも、同年代のライバルモデルより優れてはいる。

フレイザー・ナッシュ・ミッレミリア(1952年式/英国仕様)
フレイザー・ナッシュ・ミッレミリア(1952年式/英国仕様)

筆者の場合、どうしても複数のクルマを手元に置いておきたくなる。お手頃な中古車を選びがち。しかし、フレイザー・ナッシュ・ミッレミリアは、新たな発見を与えてくれた。これまでのクルマ選びが、間違っていたのかもしれないと疑うほど。

より多くの金額が1台に必要だとしても、1度ステアリングホイールを握れば、その価値へ深く納得できる。アルディントン兄弟とも、今ならきっと話が合うに違いない。

協力:ペンディン社

記事に関わった人々

  • ジュリアン・バルメ

    Julian Balme

    英国編集部ライター
  • リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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