イネオス・オートモーティブCEO「バッテリーEVだけでは失敗する」 英自工会イベントで発言
公開 : 2023.09.20 06:05 更新 : 2023.09.20 10:13
・英イネオスのCEOが「EVだけでなく複数の技術を取り入れるべき」と主張。
・トヨタUKの社長も同意し、「全地域が同じ場所にあるわけではない」と訴える。
・政府要人や一部メーカーは真っ向から反論。EV一本化路線を強調。
さまざまな選択肢提唱 しかし反論も厳しく
英国の化学大手イネオスが立ち上げた自動車部門、イネオス・オートモーティブのリン・カルダーCEOは、国の二酸化炭素排出量目標を達成する方法として、バッテリー電気自動車(BEV)だけに焦点を当てることは「失敗につながる」と述べ、目標を成功裏に達成するためにはさまざまな技術をミックスする必要があると主張した。
カルダー氏は英国自動車製造販売協会(SMMT、自工会)主催のイベントで講演し、BEVと並んで、より効率的なハイブリッドシステムや水素のような動力源に焦点を当てることが最善の道であると語りかけた。
「わたし達はEVの話ばかりしている。それはとても危険なことだと思います。わたしはミックスが必要になると考えています。EVが英国の進むべき道であり、現時点ではそれしかないと言うのであれば、失敗や価格上昇につながるリスクがあると思います」
しかし、英国運輸省のリチャード・ブルース脱炭素化担当局長はカルダー氏の意見をはねのけ、複数の選択肢を推進することは、政策の曖昧さから「行動しない言い訳になり得る」と反論した。
「現在のタイムスケールを考えると、BEVには明らかな利点があります。もし代替燃料が利用できるのであれば、航空など、バッテリーがそれほど実用的でない他の分野で使えばいいのです」
商用車を手掛けるルノー・トラックスのカルロス・ロドリゲス社長もこれを支持し、特に商用車分野に関してはBEVを第一の選択肢とすべきであり、重量などの問題でバッテリーが効果的でない場合には水素を使うべきだという持論を展開した。
「NOx(窒素酸化物)などの数値や全体的な影響を考慮すると、特に水素と比較した場合、BEVが圧倒的に優れた選択肢となります。水素も選択肢の1つであることは承知していますが、必ずしも選択すべきではないということをはっきりさせておきましょう」
昨年12月にイネオス・オートモーティブのCEOに就任したカルダー氏は、同社が販売する3.0Lガソリンエンジンまたは3.0Lディーゼルエンジン搭載のオフロード車、グレナディアが遠隔地で働く人々をターゲットとしていることを挙げ、次のように述べた。
「わたし達は、車両ごとに異なるユースケースがあると考えています」
「理想的にはEVに向いていない車両もあります。わたし達のクルマはその1つで、物を牽引したり、ハードに働いたり、山に登ったり、人里離れた場所に行ったりするような使われ方をすると考えています」
「もし本当にそのように使いたいのであれば、現在のインフラではEVはベストアンサーにはなりません」
トヨタ英国部門のアグスティン・マーティン社長もカルダー氏の意見に同意し、「炭素が敵であるならば、1つの技術だけでは解決できません。選択は決して悪いものではありません」とコメントしている。
マーティン氏はこの問題をより広い視野でとらえ、「(世界の)すべての地域が同じ場所にあるわけではない」とし、EVの導入準備がまだ整っていない一部の国では他の選択肢が使われる可能性があると述べた。
「炭素削減のあらゆる努力は賞賛されるべきです。すべての行動が素晴らしい。そうやってわたし達は道を築いていくのです」