燃費はソウル&マインドの代償 マセラティ・グレカーレ レンジローバー・ヴェラール ハイブリッドSUV比較試乗(2)

公開 : 2023.10.14 20:26

マイルドHVを積むイタリアの新星、グレカーレ 一新したプラグインHVのレンジ・ヴェラール 心から欲しいと思える1台は? 英国編集部が比較試乗

燃費はスポーティなマインドやソウルの代償

マイルド・ハイブリッドのマセラティグレカーレ・モデナは、渋滞時などを除いて、内燃エンジンを止めて走ることは難しい。運動エネルギーを電気エネルギーとして回収できる能力は、限定的だといっていいだろう。

ランドローバーレンジローバー・ヴェラール P400eの平均的な燃費は、駆動用バッテリーの充電量が乏しい状態でも、普段使いで12.4km/Lから13.5km/Lの間になる。しっかり満充電にしておけば、更に伸ばすことも容易だ。

ガンメタリックのマセラティ・グレカーレ・モデナと、シルバーのランドローバー・レンジローバー・ヴェラール P400e ダイナミックSE
ガンメタリックのマセラティ・グレカーレ・モデナと、シルバーのランドローバー・レンジローバー・ヴェラール P400e ダイナミックSE

グレカーレは、同等の条件で11.3km/L程度。転がり抵抗の大きい、ワイドなタイヤを履いているとしても、小さくない開きがある。

とはいえ、グレカーレの燃費は、スポーティなマインドやソウルを宿した個性への代償ともいえる。フルスロットルでパドルを弾きシフトアップすれば、4本出しのマフラーからバリバリと刺激的なノイズが放たれる。

動力性能や操縦性は、ドライバーズカーと呼んでいい。積極的に運転したいと思える。

レンジローバー・ヴェラールは、乗り心地や走行マナーに秀でた高級SUVだ。パワートレインの存在感は薄く、車内へ届くノイズは小さい。扱いやすく上品さを伴う。動力性能もたくましく、より望ましいモデルだと思える。

それと同時に、グレカーレは異なる側面で秀でている。試乗車にはオプションのエアサスペンションが組まれていたが、身のこなしは遥かにシャープ。路面との確かな設置感があり、躍動的な操縦性を叶えている。

乗り心地ではヴェラール コーナリングではグレカーレ

レンジローバー・ヴェラールにもエアサスは用意されるが、プラグイン・ハイブリッドのP400eでは選べない。エアポンプの稼働が、駆動用バッテリーでの航続距離に小さくない影響を与えるためだ。

興味深いことに、この2台でコーナリングを楽しめるのはエアスプリングのグレカーレ。意外ともいえるが、スチールコイル・サスペンションのレンジローバー・ヴェラールの方が、快適で穏やかな乗り心地にある。

ランドローバー・レンジローバー・ヴェラール P400e ダイナミックSE(英国仕様)
ランドローバー・レンジローバー・ヴェラール P400e ダイナミックSE(英国仕様)

速度域の高いカーブが連続する区間を、レンジローバー・ヴェラールは引き締まった姿勢制御で滑らかに処理する。ステアリングホイールには、確かな手応えがある。

だが、2205kgある車重を実感させる。路面がうねるような、長い波長の入力に対しては若干揺れが大きい。細かい隆起部分などは、巧みに均してくれるのだが。

グレカーレはグリップ力で勝り、よりシャープ。シャシーとコミュニケーションを取りやすく、積極的なコーナリング中でも調整域が広い。ストレートが見えたら、トラクションを掛けて一気にパワーを展開できる。

その間、ボディは終始フラットに保たれる。サスペンションへ掛かる負荷を、しっかりドライバーは感じ取ることができる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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