トヨタ車体、BEV版「グローバル・ハイエース」の日本導入を考える背景

公開 : 2023.10.28 21:15  更新 : 2023.10.28 21:16

背景に海外メーカー商用BEVの存在

なぜ、トヨタ車体が商用BEVバンに対して積極的な動きを見せているのか?

背景にあるのが、物流関連の事業者や、商用車を自社で多く所有する企業などが、「2050年カーボンニュートラル」を念頭においた経営方針にシフトしてきたからだ。

グローバル・ハイエースBEVコンセプトの運転席。デジタルメーターと大型ディスプレイで構成されている。
グローバル・ハイエースBEVコンセプトの運転席。デジタルメーターと大型ディスプレイで構成されている。    AUTOCAR JAPAN編集部

これはESG投資と呼ばれ、従来のような財務情報だけではなく、E(環境)、S(ソーシャル:社会性)、G(ガバナンス:企業統治)を重視した経営の考え方である。

そのため、企業は導入コストが少し割高であっても、ランニングコストとESG投資対応を踏まえて、商用BEV導入を推進するようになった。

ところが、購入したくても日系メーカーでは商用BEVのラインナップが少ないため、海外メーカーからの購入を検討するケースが目立つ。

例えば、ヤマト運輸が導入したドイツのストリートスクーター(現在のB-ON)や、ベンチャー企業のASFが企画し中国で生産する小型軽商用を佐川急便が採用するといった流れがある。

そうした中で、トヨタ車体としてはハイエースのBEV化を真剣に検討している。現行モデルの中でBEV化しても十分な荷室スペースが確保できるのが、「グローバル・ハイエース」なのだ。今回はそうした考え方をコンセプトモデルとして具現化したといえる。

では、ハイエース・バン300系は?

こうなってくると、日本のユーザーが大いに気になることがある。「ハイエース・バン」が300系なってどう進化するのかだ。

現時点でハイエースのBEV化については、「グローバル・ハイエース」の役目であり、次期「ハイエース・バン」(300系)のBEV化にはまだ当分時間がかかるものと見るのが妥当だろう。

「国内販売を視野に市場の声を聞くための展示」というグローバル・ハイエースBEVコンセプト。では海外で販売が始まっている新型「ハイエース(300系)」の日本における移行はどうなるのか?
「国内販売を視野に市場の声を聞くための展示」というグローバル・ハイエースBEVコンセプト。では海外で販売が始まっている新型「ハイエース(300系)」の日本における移行はどうなるのか?    桃田健史

「ハイエース・バン」300系のハイブリッド化、またはブラグインハイブリッド化については今回のショーでは明確な方向性が示されなかった。

そのため、仮に「グローバル・ハイエースBEV」の国内販売が始まった段階でも、現行「ハイエース・バン」を並行して製造・販売することが予想される。

かといって、「ハイエース・バン」の個人ユーザー、または個人事業主がBEV化を求めて「グローバル・ハイエースBEV」にシフトする可能性はあまり高くないはずと、トヨタ車体では考えている。

その理由について、同社関係者は「最大の課題は1ナンバー。高速道路の通行料金代が4ナンバーより高くなる」と指摘。その上で「現行ハイエース・バンのユーザーは、いわゆる“ひとり親方”の皆さんであり、1ナンバー車の需要は少ないはず」と市場を分析している。

日本市場にベストマッチし過ぎている、現行「ハイエース・バン」は今後、どのように進化するのか。その姿は未だ、不明だ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 撮影 / 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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