ロータリーによる再発明 マツダMX-30 R-EVへ英国試乗 幅広い人の選択肢へ加える価値アリ

公開 : 2023.11.09 19:05

印象的な60km/hから110km/hまでの加速

英国の一般道を走らせてみると、注意深く耳を傾けない限り、シリーズ式ハイブリッドの働きを感じ取ることは難しい。駆動用モーターは170psと26.3kg-mを発揮し、数字として目立つものではないものの、流れの速い道でも不満を感じさせることはない。

印象的だったのが、60km/hから110km/hまでの加速。内燃エンジンと電気モーターが協働しているとは思えないほど、スムーズに走ってみせた。

マツダMX-30 R-EV エクスクルーシブ・ライン(英国仕様)
マツダMX-30 R-EV エクスクルーシブ・ライン(英国仕様)

ドライブモードには、チャージ、ノーマル、EVの3種類がある。チャージ・モードでは駆動用バッテリーを温存し、ロータリーエンジンを積極的に回して充電量を保てる。

ノーマル・モード時は、駆動用バッテリーの充電量が43%を下回るか、アクセルペダルを深く踏み込まない限り、エンジンは始動しない。バッテリーEVのように静かに走る。

充電量が減ると、40km/h程度の低速でもエンジンは始動する。それまでの車内が静かなだけに、電気ドリルのような音が少し目立っていた。主に、2300rpmから4500rpmの間で回転するようだ。

EVモードは、充電量が尽きるまで電気の力だけで走る。車内は静かで、高速道路でもタイヤの転がり音が聞こえてくる程度。その後は、エンジンが介入する。

燃費は、郊外や都市部などを複合的に160kmほど運転した状況で、平均17.0km/L。電費は6.1km/kWhと、悪くない数字が得られた。ちなみにカタログ値は、100.0km/Lがうたわれる。

快適性は同クラスのレクサスUXへ並ぶ

アクセルペダルは適度な重み付けで、ブレーキペダルの反応は漸進的。ステアリングホイールの反応に若干の癖があるものの、慣れれば望んだ通りにMX-30 R-EVを操れる。

マツダらしいのが、ワインディングを爽快に走りたいと思わせる、運転の楽しさが備わること。多くのクロスオーバーとは一線を画す。

マツダMX-30 R-EV エクスクルーシブ・ライン(英国仕様)
マツダMX-30 R-EV エクスクルーシブ・ライン(英国仕様)

サスペンションはフロントがマクファーソン・ストラット式で、リアがマルチリンク式。英国のように荒れた路面でも、巧みに衝撃がなだめられていた。ボディロールは少し大きめといえるが、快適性でいえば同クラスのレクサスUXへ並ぶだろう。

ただし、ステアリングホイールへ伝わる感触は薄い。エコタイヤの影響か、湿った路面ではアンダーステアも強くなるようだった。

確かに、低速域で洗練性に水を差すロータリーエンジンのノイズや、淡白なステアリングフィールなど、MX-30 R-EVで気になる点はゼロではない。それでも、完成度の高いパッケージングだといえる。

一度の給油で走れる距離が長く、クロスオーバーというクルマを楽しむ範囲にも余裕が生まれている。幅広い人の選択肢へ加える価値があると、お伝えできるようになった。

運転する時間が長くなるほど、魅力的に思えてくる。スタイリングは美しく、インテリアの品質も高い。パワートレインも、充分に魅力的だといえる。本当に優れたクルマとして、MX-30が再発明されたといっていいだろう。

◯:ハードスイッチが残る好印象なインテリア 運転を楽しめる操縦性 他にはないドライブトレイン
△:狭い空間では観音開きは乗りにくい 競合モデルに劣るエネルギー効率 低速域で少し目立つエンジンノイズ

マツダMX-30 R-EV エクスクルーシブ・ライン(欧州仕様)のスペック

英国価格:3万3150ポンド(約600万円)
全長:4395mm
全幅:1795mm
全高:1555mm
最高速度:140km/h
0-100km/h加速:9.1秒
燃費:100.0km/L
CO2排出量:21g/km
車両重量:1780kg
パワートレイン:永久磁石モーター+シングルローター830cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:17.8kWh
最高出力:170ps
最大トルク:26.3kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョナサン・ブライス

    Jonathan Bryce

    英国編集部。英グラスゴー大学を卒業後、モータージャーナリストを志しロンドンに移住。2022年からAUTOCARでニュース記事を担当する傍ら、SEO対策やSNSなど幅広い経験を積んでいる。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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