トヨタ「楽しいEV」推進で、セリカ復活へ… 最新技術と昔ながらのレシピを融合

公開 : 2023.11.21 06:05

スポーツカー開発の鍵はバッテリー?

新型車開発の出発点は、乗員を収容する必要性と、乗員が座る場所(例:スポーツカーでは低い位置、SUVでは高い位置)である。

トヨタの中嶋裕樹CTOは、バッテリーの高さが低いからこそ、電動スポーツカーで内燃エンジン車のプロポーションを模倣できるのだと語った。

EV向けの "マニュアル・トランスミッション" の開発が進んでいる。
EV向けの "マニュアル・トランスミッション" の開発が進んでいる。

「バッテリーの高さは、車高の低いレクサスのセダンやトヨタのGRスポーツカーにとって重要なポイントです」

「では、各部品のダウンサイジングを最大化するにはどうすればいいでしょうか。バッテリーの開発によって、出力を拡大したり、車高を下げたり、形や大きさを変えたりすることができます。ダウンサイジング技術によって、見たこともないような形が可能になる。eアクスルとHVACを最小化することで、製品を強化できるのです」

新プラットフォームは、トヨタの車載OS「アリーン(Arene)」と統合される。パフォーマンスカーの場合、所有者がさまざまな機能をダウンロードできるようにするもので、レクサスLFAのパフォーマンスやトヨタGR86のステアリングフィールなどが例として挙げられる。 

中嶋CTOは、バッテリーEV用のクラッチ付きマニュアル・トランスミッションは楽しいクルマの定番になるだろうとし、「単に高トルク、ハイパワーであるべきではなく、いかにして運転する楽しさを提供できるかが目標です」と述べた。トヨタのステア・バイ・ワイヤも新型EVに搭載される。

セリカ復活の意欲を示すトヨタ

2030年までに登場する30車種のうちの1つとして、MR2と同様にセリカの復活も現実味を帯びてきた。

経営責任者ではなくなったが、いまだトヨタの経営と戦略に大きな影響力を持つ豊田会長は社内報『トヨタイムズ』において、セリカの復活を望んでおり、同社幹部にもその意向を伝えていると語った。「お願いはしています。どういう流れになるかはわからないけれど」

トヨタGR86の "後継" としてEVのセリカが登場するのだろうか……?
トヨタGR86の "後継" としてEVのセリカが登場するのだろうか……?

GR86の生産期間が限られている(と予想される)ことを考えると、ラインナップには “フロントエンジン” スタイルのスポーツモデルが入る余地があるだろうし、新しいプラットフォームは後輪駆動だけでなく、車種によっては前輪駆動と四輪駆動にも対応できる。幹部は誰も具体的なコメントをしていないが、中嶋CTOはセリカの話題になると笑顔を浮かべた。

レクサスのチーフブランディングオフィサーであるサイモン・ハンフリーズ氏は、電動スポーツカーについて次のように語った、

「多くの人々は、電動化によって(自動車が)コモディティ化してしまうのではないかと心配しています」

「アキオ(豊田会長)は “それはダメだ” と言い、コモディティにしないよう働きかけています」

2017年、トヨタが「退屈なクルマはもう作らない」と宣言したのは有名な話だ。レース愛好家である豊田会長は、ガズーレーシング部門の設立と拡大の原動力となり、近年GRスープラ、GRヤリス、GRカローラ、GR86を発売して高い評価を得ている。

トヨタはEVに力を入れながらも、世界的な自動車メーカーとしての規模を活かして、EVを受け入れる準備や成熟度が異なる各市場向けに、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、内燃エンジン車の開発に引き続き取り組んでいる。実際、2030年までにEV販売350万台を達成したとしても、予測される総販売台数の35~40%にすぎない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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