苦難を経て86台 シェルビー・マスタング GT MG Xパワー SV(1) 強心臓はフォードV8

公開 : 2025.07.26 17:45

フォードのV8を積むXパワー SV TFとイメージ共有しつつ好戦的な雰囲気 初代の容姿と重なる5代目マスタング 40年越しにシェルビー復活 同エンジンを得た同期の2台をUK編集部がご紹介

苦難を経て量産へ辿り着いたXパワー SV

シンプル&パワフルで、タフなV8エンジンをアメリカン・マッスルカーから抜き取り、高性能な1台を生み出す手法は、さほど珍しいものではない。英国でも、ジェンセンやACカーズ、ブリストルといったブランドが、同じアイデアで具現化してきた。

2000年代半ばのMGにとっても、フォードのV型8気筒エンジンは、歴代最高のフラッグシップ・モデルにうってつけだった。同時に生産者のフォードも、その可能性を無視することはなかった。

手前からMG Xパワー SVと、シェルビー・マスタング GT
手前からMG Xパワー SVと、シェルビー・マスタング GT    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

MG Xパワー SVほど、苦難を経て量産へ辿り着いたクルマは珍しい。もう少し開発へ手こずっていたら、日の目を見ることはなかっただろう。ちなみに、SVとはスポーツ・ヴェローチェの略だ。

2005年4月にMGローバー社は破綻するが、2003年の発売から正規にラインオフしたのは、3台だけだった。その後、クラシックカー・ディーラーのオークフィールズ社が在庫部品を入手。83台が追加で提供されている。

マングスタでは癖のある見た目に賛否両論

Xパワー SVの起源を遡ると、10年前のデ・トマソ社へ辿り着く。1996年のスイス・ジュネーブモーターショーで発表された、デザイナーのマルチェロ・ガンディーニ氏によるスタイリングをまとったコンセプトカー、ビグアがそこにある。

市場の好評を受け、プロジェクトは「マングスタ」という名称を復活させつつ具体化。だが、直後にデ・トマソ社へ投資していたブルース・クヴァーレ氏が主導権を握り、クヴァーレ・ブランドのもとで開発は進んだ。

MG Xパワー SV(2003年~2007年/英国仕様)
MG Xパワー SV(2003年~2007年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

シャシーはエンリケ・スカラブローニ氏の設計によるスチール製で、ボディは特殊なプラスティック製。優れた走行性能を叶えていたが、癖のある見た目には賛否両論が湧いた。販売は1999年に始まり、3年間での生産数は284台。成功とはいえなかった。

そんな折、英国の投資家グループによって、MGローバーは2001年に買収。これを知ったブルースは、マングスタの販売権利に関して同グループへ打診する。最終的には、アメリカでの販売許可を既に得ていたことが有利に働き、クヴァーレ社の買収へ至った。

MG TFとイメージを共有 好戦的な雰囲気

当初のMGローバーは、ロゴマークを張替える程度で、マングスタの販売を計画していたようだ。ところが、デザインディレクターを務めていたピーター・スティーブンス氏は、クルマにひかれたヒキガエルのようだと発言し、それを拒否する。

彼は、軽量な独自のカーボンファイバー製ボディをデザイン。フロントガラスも含めて、自動車の認可に関わるハード面には手を加えず、オリジナルとはまったく異なる姿を与えた。モータースポーツへの参戦も、可能性には含まれていたようだ。

MG Xパワー SV(2003年~2007年/英国仕様)
MG Xパワー SV(2003年~2007年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

フロントノーズは、同時期のMG TFとイメージを共有。大きくフレアしたフェンダーラインが、マングスタの比ではないほど好戦的な雰囲気を生んだ。ボディサイドのエラや、フィアット・クーペ譲りの丸いテールライトは、その頃に流行した処理といえた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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