ディフェンダー・オクタ ノマド 2 マスタング・ラリー オン/オフ兼備が面白い(2) 3種3様のベストファンは?

公開 : 2025.07.04 17:50

ディープなクルマ好きを誘惑する、オン/オフの二刀流モデル 桁外れの走破性を持つディフェンダー・オクタ 別次元の運転体験といえるノマド 2 滑らかにスライドするマッハE ラリー UK編集部が比較試乗

滑らかに旋回し、漸進的にテールスライド

今回の3台の、トルクウェイトレシオを比較してみる。アリエル・ノマド 2は1t当たり73.6kg-mと桁違いに高く、フォードマスタング・マッハE ラリーの37.3kg-m、ランドローバーディフェンダー・オクタの32.4kg-mと続く。軽さがモノをいう。

タイヤは、ノマド 2とディフェンダー・オクタがオールテレーン。マッハE ラリーはオールシーズンで、どちらかといえばオンロード向きといえる。ターボエンジンと電気モーターでは、トルクの発生スタイルも異なる。

左からランドローバー・ディフェンダー 110 P635 オクタ・エディションワンと、アリエル・ノマド 2
左からランドローバー・ディフェンダー 110 P635 オクタ・エディションワンと、アリエル・ノマド 2

グラベルコースを軽快に走るなら、アクセルペダルの加減で滑らかに旋回し、漸進的にテールがスライドし、鋭く加速できるバランスが望ましいと想像するだろう。軽く手首を傾けるだけで、旋回中のスタンスを瞬時に調整できる、敏捷性も欲しいところ。

意外かもしれないが、マスタング・マッハE ラリーは、まさにそんなバッテリーEVだ。電気モーターが、楽しさを引き上げている。先が見通せないような区間で、即時的なレスポンスが効果的に機能する。

コースをより我がモノとするマッハE ラリー

大きいディフェンダー・オクタは、比較すると明らかに安定志向。とはいえ、グッドイヤーのオールテレーン・タイヤが、グラベルで秀抜のグリップ力を生み出す。路面の凹凸をゴムのブロックが捉え、想像以上の速度域で駆け回ることができる。

反面、タイトコーナーへ高速で突っ込むと、6Dダイナミクス・インターリンク油圧ダンパーを持ってしても、2510kgの車重を受け止めるのは難しい様子。従来のディフェンダーより15%ほど興奮度は高いが、オクタが見違えてシャープなわけではない。

フォード・マスタング・マッハE ラリー(英国仕様)
フォード・マスタング・マッハE ラリー(英国仕様)

他方、マスタング・マッハE ラリーのタイヤは、80km/hを超えると表面に浮いた小石で流れてしまう。シャシー本来が持つ流暢さも、高い速度域では発揮されにくい。

そのかわり速度管理を意識すれば、最高に楽しい。反応の鋭いパワートレインと、低めの重心が功を奏し、コーナーではリカバリーもしやすい。ディフェンダー・オクタも面白いが、今回のスウィートラムのコースを、より我がモノとしている。

まるで別天地のノマド 2 運転体験は別次元

ノマド 2へ乗り換えると、まるで別天地。インタラクティブさに打ちのめされる。ディフェンダー・オクタで、存分に遊べる区間は長くない。マスタング・マッハE ラリーも、限定的なグリップ力と最低地上高、減衰特性で、安定して走れる区間は限られる。

ノマド 2なら、コースのすべてを楽しめる。コミュニケーション力の高さから、運転体験が別の次元に引き上げられている。

手前からアリエル・ノマド 2と、フォード・マスタング・マッハE ラリー、ランドローバー・ディフェンダー 110 P635 オクタ・エディションワン
手前からアリエル・ノマド 2と、フォード・マスタング・マッハE ラリー、ランドローバー・ディフェンダー 110 P635 オクタ・エディションワン

ただし、快適ではない。ディフェンダー・オクタやマスタング・マッハE ラリーでは、細かな凹凸をサスペンションが吸収し、その存在は包み隠されていた。ノマド 2は、あらゆる路面変化に岩や窪みを、腰や腕を通じて直接伝える。

体力的な負荷も小さくない。シャープなシャシーに合わせて、相当素早くステアリングホイールの角度を決める必要はある。それでも、操縦性は精緻で忠実。ドライバーの努力以上の、見返りで応えてくれる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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