セブンの「本質を変えず」にアップデート R500の加速は狂気の沙汰 ケータハム 7台を乗り比べ(3)

公開 : 2024.01.07 17:45

BBCトップギアでヴェイロンの記録を更新

デュラテック・ユニットは滑らかで粘り強い。比較的静かに回転するが、アクセルオフのオーバーランで小気味いい破裂音を響かせる。6速MTのレシオは高めで、ステアリングラックのレシオは低め。

グリップは極めて高く、姿勢制御はタイト。今回の中で、1番落ち着いているセブンだ。

ケータハム・スーパーライト R500(2008〜2014年/英国仕様)
ケータハム・スーパーライト R500(2008〜2014年/英国仕様)

明るいグレーにオレンジのレーシングストライプが施された、ケータハム・スーパーライト R500は、そんな印象と対照的。2008年の発売時、120に150、300、400と用意されたスーパーライト・シリーズの頂点に君臨していた。

エンジンは、フォードのデュラテック。元F1技術者のサイモン・アームストロング氏が設計したシリンダーヘッドを載せ、専用スロットルボディが組まれ、自然吸気の1999ccから266ps/8500rpmを引き出している。1t当たりのパワーは527psだ。

スーパーライトを名乗るだけあって、ノーズコーンとフェンダーはカーボンファイバー製。車重は506kgしかない。

オプションだった、ケータハム・モータースポーツの設計による6速シーケンシャルMTも、このクルマには積まれている。その追加費用は、2950ポンドと高額だった。

今回ご登場願ったスーパーライト R500は、ケータハム自ら所有するデモ車両。BBCのテレビ番組「トップギア」で覆面ドライバーのスティッグがドライブし、ブガッティ・ヴェイロンの記録を破る1分17.9秒で、テストコースを周回したクルマそのものだ。

伝説的な系譜を誇示する最高の仕上がり

カーボンファイバー製シェルのバケットシートには、ソフトパッドすらない。ダッシュボードには、デジタルのメーターパネルが備わるだけ。

発進時にクラッチペダルを踏む必要はあるが、走行中のシフトアップはレバーを手前に倒すだけ。僅かにアクセルペダルを緩めれば良い。果たして、その加速は狂気の沙汰。

ケータハム・スーパーライト R500(2008〜2014年/英国仕様)
ケータハム・スーパーライト R500(2008〜2014年/英国仕様)

断熱材が備わらず、走り出すとすぐに熱がキャビンに届き始める。エンジンの回転上昇とともに、スリリングなノイズがクレッシェンドしていく。耳が痛くなるほど。ナンバー登録されているが、極めて野蛮なセブンだ。

7500rpmを超えると、9000rpm目掛けて一段と過激さが増す。確実な操作が求められる。ドライバーの正面には、カーボン製の低いスクリーンが備わり、手前の視界を遮る。タイヤは10年ものらしい。

グリップ力を遥かに超えるパワーが放たれる。とはいえスーパーライト R500も、ほかの6台のセブンと同じく扱いやすく、ドライバーの操作へ忠実だった。

半世紀に渡るケータハムの進化にあって、スーパーライト R500は最も強い輝きを放つ。伝説的な系譜を現代に顕示する、最高の仕上がりだろう。

協力:ケータハム・カーズ社、ジェームス・ホワイティング・セブンズ社、ビスター・ヘリテージ社、ケータハム&ロータス・セブン・クラブ

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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