NAモデルは早い者勝ち ケータハム・セブンの試作車へ(2) 日産・ルノーの共同開発品の印象は?

公開 : 2025.07.22 19:10

実はエンジン入手へ悩んでいたケータハム 日産とルノーの共同開発、4気筒ターボのHR13DDT採用へ ECUは独自開発 マツダの6速MTも 自然吸気の印象へ近づけたい UK編集部が試作車へ試乗

ECUは独自開発 マツダの6速MTも採用

日産ルノーが共同開発した、HR13DDTエンジンを獲得するケータハム・セブン。同社の技術者は、シャシーへ収めるための加工以外、手は加えていないと話す。現状では5750rpm前後で約130psと、2000-5500rpmの間で約17.9kg-mを発揮するという。

ECUは、ケータハム独自のものが組まれる。既存のECUを改変するより、信頼性は高いのだとか。最高出力や最大トルクは暫定値で、現行のフォード製シグマ・ユニットを積むセブンと、同等のラップタイムを得られる見込みとのこと。

ケータハム・セブン HR13DDTエンジン・プロトタイプ
ケータハム・セブン HR13DDTエンジン・プロトタイプ    ジョン・ブラッドシャ(John Bradsha)

エンジンに合わせて、トランスミッションはマツダMX-5(ロードスター)用の5速から、6速へバージョンアップ。リミテッドスリップ・デフも、BMW譲りのユニットから自社開発品へ置き換えられるという。

ケータハム・アカデミー用のレーシングカーから開発は進行中で、同社の工場で仕上げられ、2026年仕様から提供が始まる予定。コンポーネントの都合で、ユーザーによる自作はできない。価格は未定だが、若干上昇するという。

自然吸気のフィーリングへ近づけたい

エントリー・モデルとなるセブン 170には、従来どおりスズキ製の3気筒ターボユニットが載る。それ以外のモデルには、在庫がなくなるまでデュラテック・ユニットが搭載され、その後はHR13DDTターボユニットへ置き換わっていくはず。

つまり、自然吸気エンジンのセブンがお望みなら、早い内に行動する必要がある。ケータハムは、可能な限り自然吸気のフィーリングへ近づけたいと考えているようだが。

ケータハム・セブン HR13DDTエンジン・プロトタイプ
ケータハム・セブン HR13DDTエンジン・プロトタイプ    ジョン・ブラッドシャ(John Bradsha)

試乗したプロトタイプには、レブリミットが迫ることを知らせる、警告ランプが備わった。本来の音を増幅する、サウンドシンポーザーも。1.0L当たりのパワーは100psほどで、レッドラインは6000rpm。かつての、フォード製1.7Lケント・ユニットに近い。

印象は、どちらかといえば実務的。最新の電子制御技術が実装され、回転数を問わず力強いが、2000rpmからのレスポンスは印象的。3000rpmから5000rpmでの、トルクの太さが気持良い。

即時的で漸進的 殆ど気にならないターボラグ

ターボラグは僅かにあるが、車重が軽いから殆ど気にならない。アスファルトが濡れたブランズ・ハッチ・サーキットでは、ヘアピンでパワーを掛けると、リアタイヤが簡単に空転する。高速コーナーでは、回転数を問わずパワーでラインを調整できる。

即時的で漸進的。サウンドシンポーザーのおかげで、吸気音がより鮮明に聞こえてくる。6速MTは、新エンジンと同じくらい滑らかに変速でき、ギア比も適度にクロスし丁度いい感じ。ギア比は100km/hを出すと、6速で3000rpmになる。

ケータハム・セブン HR13DDTエンジン・プロトタイプ
ケータハム・セブン HR13DDTエンジン・プロトタイプ    ジョン・ブラッドシャ(John Bradsha)

より軽量で9000rpmまで回る、160馬力くらいの1.6L自然吸気なら、もっと望ましいセブンになるかもしれない。だが今の環境規制下で、そんなユニットは作られていない。HR13DDTエンジンは、パワーやサウンドまで概ね期待通りといえる。

レーシング・アカデミーのドライバーは、これまでと同様に、それ以上に、ドライビングを楽しめるはず。供給も、しばらくは心配しなくて良い。ただし、自然吸気のセブンは早い者勝ちだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ケータハム・セブンの試作車への前後関係

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