実はエンジン入手に悩んでいた ケータハム・セブンの試作車へ(1) 日産GT-R譲りの技術も

公開 : 2025.07.22 19:05

実はエンジン入手へ悩んでいたケータハム 日産とルノーの共同開発、4気筒ターボのHR13DDT採用へ ECUは独自開発 マツダの6速MTも 自然吸気の印象へ近づけたい UK編集部が試作車へ試乗

エンジンの入手に悩んでいたケータハム

英国スポーツの雄、ケータハムは、エンジンの入手に最近まで悩んでいた。長年登用してきた1.6Lのシグマ・ユニットと、2.0Lのデュラテック・ユニットは、ここ数年間、フォードが生産を止めているからだ。

ケータハムは、シグマ・ユニットのブロックをまとめて購入し、スペアパーツを利用してエンジンを組み立ててきた。しかし、そろそろ在庫がなくなるらしい。デュラテック・ユニットは、完成状態で1200基を在庫するというが、いずれ数は尽きる。

ケータハム・セブン HR13DDTエンジン・プロトタイプ
ケータハム・セブン HR13DDTエンジン・プロトタイプ    ジョン・ブラッドシャ(John Bradsha)

そこで同社は、代替ユニットを探してきた。毎年34台から40台が製造される、ケータハム・アカデミーのレーシング・セブン用ユニットの代わりを、優先的に。これまでの30年間に約1400名のレーサーを排出した、ワンメイクレースが英国では開かれている。

現在のCEO、ボブ・レイシュリー氏は、OEM業界で多くの経験を積んできた人物。ご存知の通り、セブンは実用的なクルマではないが、ビジネスは順調に進み始めたようだ。

1.3L 4気筒ターボのHR13DDTに決定

入手しやすく、信頼性が高く、軽量で堅牢、適正な価格のエンジンを探してきたと、彼は振り返る。「あらゆる手段を講じてきました」。果たして辿り着いた先は、ルノージーリー・ホールディングスの合弁企業、「ホース・パワートレイン」だったという。

同社は、年間300万基以上の生産能力を有する。複数あるユニットの中から選ばれたのは、軽量な1.3L 4気筒ターボのHR13DDTエンジン。ルノー・メガーヌ日産キャシュカイ(旧デュアリス)、メルセデス・ベンツAクラスなどの動力源になっている。

ケータハムCEOのボブ・レイシュリー氏(右)と、筆者、マット・プライヤー(左)
ケータハムCEOのボブ・レイシュリー氏(右)と、筆者、マット・プライヤー(左)    ジョン・ブラッドシャ(John Bradsha)

「多くのクルマに搭載され、ホース社は今後10年間の供給を保証してくれています」。レイシュリーが続ける。生産工場は、フランスや中国ではなく、スペインにある。

最高出力は、116psから162psまでが標準。ブロックとヘッドはアルミ製で、排気量1332cc、タイミングチェーン式のDOHCユニットだ。シリンダー内には、R35型の日産GT-Rで初採用された、厚さ0.2mmの摩擦低減コーティングが施されている。

試作車のボンネットに載る四角い箱

HR13DDTユニットは、デュラテック・ユニットより約35kg、シグマ・ユニットより20kg前後軽いという。インタークーラーに関する機器を含めると、その差は縮まるはずだが、従来より重くはならないとレイシュリーは説明する。

既存シャシーへ問題なく収まることも、大きなメリットだと話す。実際は、燃料ポンプなどが上部へ突き出ており、ボンネットは多少加工する必要があるようだが。

ケータハム・セブン HR13DDTエンジン・プロトタイプ
ケータハム・セブン HR13DDTエンジン・プロトタイプ    ジョン・ブラッドシャ(John Bradsha)

というわけで、筆者は雨のブランズ・ハッチ・サーキットへやってきた。HR13DDTユニットを積む、プロトタイプへ試乗させていただくために。1台目はシャシーがワイド仕様のシリーズ5、SVで、エグゾースト系の再設計に伴い、左ハンドルが選ばれている。

もう1台、アカデミー・レーシングカーはシリーズ3のナローシャシーで、右ハンドル。こちらは、より量産仕様に近いという。まだボンネットには四角い箱が載っているが、洗練されたデザインで開発は進んでいるそうだ。

撮影:ジョン・ブラッドシャ(John Bradsha)

この続きは、ケータハム・セブンの試作車へ(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ケータハム・セブンの試作車への前後関係

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