高性能は「ひけらかさない」 ジャガーXFR 当時のクラス最強サルーン 英国版中古車ガイド

公開 : 2024.01.05 19:05

ジャガーらしさを堪能できるXFR 紳士のように能力をひけらかさない容姿 洗練されたクラス最強サルーン 英国編集部が魅力を振り返る

英国紳士のように能力をひけらかさない

ジャガーXFRは、エアアウトレットの切られたボンネットの内側に、特別なエンジンが載っていることを過度には主張しない。同時期のE60型BMW M5やマセラティクアトロポルテのように、あからさまな変更は加えられなかった。高速なジャガーとして。

ハンサムな姿はそのままに、専用のボンネットやホイールナットで、控えめに差別化。本物の英国紳士と同じく、能力をひけらかすことはない。後ろ姿は、4本出しのマフラーカッターで凄みを利かせていたが。

ジャガーXFR(2010〜2015年/英国仕様)
ジャガーXFR(2010〜2015年/英国仕様)

エンジンは510psを発揮する5.0L V8スーパーチャージャーで、発情期のオスライオンのように、勇ましい唸りを放つ。最高速度は249km/hへ自主規制されていたが、0-100km/h加速4.7秒という俊足から、それ以上の余裕があることは明らかだった。

最速のスポーツサルーンへ躍り出るべく、当時のジャガーの本気が落とし込まれていた。だが速さ以上に、最大の特長といえたのが洗練性。圧倒的なパフォーマンスを、平然と披露してみせた。

サスペンションには、アダプティブダンパーを採用。ニュルブルクリンクでは岩のように引き締めることもできたが、ロンドンの傷んだ一般道では、しなやかに衝撃を吸収できた。当時は、他に例のない二面性を備えていた。

洗練されたクラス最強サルーン

ステアリングレシオはショート化され、ブレーキはフロントに380mm、リアに376mmのディスクを採用。リミテッドスリップ・デフにピレリPゼロ・タイヤが組み合わされ、2009年のAUTOCARでは、ドライコンディションでM5を超える速さを見せつけた。

スプリングはノーマルのXFより30%硬く、車高はダウン。理想的な道へ出くわしたら、扱いやすい操縦性を探求することも可能。豪快なパワースライドも許容した。

ジャガーXFR(2010〜2015年/英国仕様)
ジャガーXFR(2010〜2015年/英国仕様)

スタイリングと同様に、インテリアも主張は控えめ。ノーマルのXFの車内へ、僅かにスパイスを効かせた程度といえた。専用ステッチのレザーシートと、305km/hまで振られたスピードメーターが目立った違い。「R」のロゴが、随所に施されてもいる。

脈打つように光るスタートボタンや、システムオンで立ち上がるダイヤル式のシフトセレクター、回転するエアコンの送風口などは維持。特別感の香るディティールを、堪能するのも悪くない。

インフォテインメント・システムは、当時でも時代遅れだった。燃費も悪い。とはいえ、5.0L V8スーパーチャージャー・エンジンを積むサルーンとして、求めるものは別にあるはず。

21世紀の英国が、洗練された世界最強クラスのサルーンを生み出すことを証明した、ジャガーXFR。中古車になっても、その輝きは薄れていないと思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョナサン・ブライス

    Jonathan Bryce

    英国編集部。英グラスゴー大学を卒業後、モータージャーナリストを志しロンドンに移住。2022年からAUTOCARでニュース記事を担当する傍ら、SEO対策やSNSなど幅広い経験を積んでいる。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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