クルマ漬けの毎日から

2025.09.27

ミュンヘン・モーターショー(IAAモビリティ2025)が9月前半に開催され、取材に行きました。2021年にフランクフルトからミュンヘンへ舞台を移したドイツのモーターショーの印象と、ルノーグループの新CEOについてお伝えします。

ミュンヘン・モーターショーとルノーグループ新CEOの印象【クロプリー編集長コラム】

もくじ

取材1日目:今回のミュンヘンは?
取材2日目:ルノーグループ新CEO 初取材

取材1日目:今回のミュンヘンは?

今回のミュンヘン・モーターショーはどうだったか? ひと言では答えられない質問だ。まず、会場は理想的だった。6つのホールにつくられた出展社スタンドでは、大いに期待できる技術が披露されていた。

またミュンヘンの街は、モーターショー関連の広告であふれていた。大手自動車会社、とくにドイツ勢は「このモーターショーは新たな始まりを告げている」とばかりに、コストをかけて大々的に宣伝し、アウディははっきりとそう表明していた。

ミュンヘン・モーターショーでメルセデス・ベンツが公開した「GLC with EQテクノロジー」

その理由は当然ながら、中国メーカーの拡大を恐れてのこと。今回のミュンヘンでは、欧州メーカーよりもさらに多くの中国メーカーが出展していた。とはいえ、彼らのスタンドはあまり期待できそうもない場所に設置されていた。

会場には欧州メーカーの不安感がかすかに漂っており、それを象徴していると感じたのは、メルセデス・ベンツの「Welcome Home(おかえりなさい)」というメッセージだった(一番上の画像)。

私にはこれが「あなた達は行ってしまったけれど、私達にはあなた達が必要です。どうか戻って来てください」と言っているように思えた。自暴自棄になって情に訴えても、クルマが売れるとは思えないが。

取材2日目:ルノーグループ新CEO 初取材

ルノーグループの新CEO、フランソワ・プロボ氏への初取材を私は大いに楽しんだ。新CEOには、初めて戦場に赴いた兵士が経験するような、最初の厳しい試練が待っていると思われていた(ダイナミックな前CEO、ルカ・デメオ氏を知る人はだれもがそう予想していただろう)。

しかし、プロボ新CEOは洗練された人で、また自信に満ちた人だとわかった。彼の話し方には2つのスキルが備わっていて、いつも話の筋が通っており、また端的に話す。ひょっとしたら、前CEOよりもさらに単刀直入に話す人かもしれない。

ミュンヘン・モーターショーで発表された新型ルノー・クリオの前に立つ、新CEOのフランソワ・プロボ氏。

プロボ新CEOの冒頭の発言で明らかになったのは、ルノーの変革をまた最初からスタートするつもりはないという点。ましてやその柱となる経営計画「Renaulution(ルノリューション)」に変更はないという。その理由は納得のいくもので、この計画を策定した時(前CEO時代)、彼自身もチームの一員だったからだ。

「素晴らしいクルマが続々と登場します」とプロボCEOは言う。ルノーはエモーショナルなデザインという自身のスキルに自信を持っており、中国系メーカーのどのデザインよりも優れていると自負していると語った。またアルピーヌのF1チームについても、改善が進んでいると前向きにコメントした。

新CEOのもと、ルノーグループの舵取りは安全かつ着実に行なわれているという印象を持った。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    小島薫

    Kaoru Kojima

    ドイツ自動車メーカーの日本法人に在籍し、オーナーズマニュアルの制作を担当。その後フリーランスで翻訳をはじめる。クルマはハッチバックを10台以上乗り継ぎ、現在はクーペを楽しんでいる。趣味はピアノ。

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