クルマとの関係性を深める操舵感 アルピーヌA290(2) ゴルフ GTIと重なる大人な走りの一体感

公開 : 2025.06.19 19:10

新型マイクラの兄弟版ホットハッチ、アルピーヌA290 5 ターボを彷彿とさせる見た目 高級感に唸らされる内装 公道で満足できる220ps ゴルフ GTIと重なる大人な一体感 UK編集部が試乗

公道で充分満足できる220ps 最大トルク30.4kg-m

今回試乗したアルピーヌA290は、220psの方。0-100km/h加速は6.4秒で、180ps版の7.4秒より1.0秒速い。ただしハード的には共通で、ソフトで最高出力は調整されている。パワーオン時の人工音は2種類から選べるが、お好みでなければ消すこともできる。

公道を走らせている限り、動力性能には充分満足できるはず。パワフルでスムーズで、レスポンシブ。ただし、ATをキックダウンさせるようにアクセルペダルを深く踏み込むか、オーバーブースト・ボタンを押さない限り、220psは開放されない。

アルピーヌA290 GTS(英国仕様)
アルピーヌA290 GTS(英国仕様)

1479kgの車重を考えると、有り余るほどではないものの、すぐに求めたパワーを引き出せる。最大トルクは30.4kg-mで、旋回中や荒れた路面で迂闊に右足を倒すと、トルクステアが生じるほど。

ブレーキはバイワイヤ式だが、感触は良好。回生ブレーキの効きはロータリーダイヤルで選べるが、ワンペダルドライブには対応しない。

ルノーらしい快適性 関係性を深める操舵感

サスペンションのダンパーはアダプティブではないが、乗り心地はフランス車らしくお見事。ミニ・クーパーと乗り比べたら、優しさと滑らかさに驚く人もいそうだ。小柄なハッチバックらしく、普段使いを快適にこなせるはず。

高速道路での安定性も高い。酷く荒れた区間では、少しソフトすぎると感じるかもしれないが。ロードノイズは、通常の5と比較して、特段うるさいようには感じなかった。

アルピーヌA290 GTS(英国仕様)
アルピーヌA290 GTS(英国仕様)

セーブ、ノーマル、スポーツ、パーソナルの4種類から選べるドライブモードによって、旋回時の中心軸は変化する印象。どのモードでも、低い重心位置が手伝って身軽に走れる。スタビリティ・コントロールは、ESCボタンを長めに押すとオフにできる。

ステアリングは、感触が薄めながら軽く正確。以前のメガーヌのように、特殊なステアリングナックルは備わらないが、パワーオンで手応えが変化しクルマとの関係性を深めてくれる。電動化の時代に、ホットハッチらしい特徴へ触れられることがうれしい。

VWゴルフ GTIと重なる大人な一体感

サーキットでは、公道以上にA290は印象的。ルノーらしく、アクセルペダルの加減でコーナリングラインやスタンスを調整できる。グリップ力は非常に高く、縁石へ乗り上げても安定性を失わず、手のひらへ伝わる感触は負荷が高まるだけ強くなる。

コーナーの途中でアクセルペダルを緩めると、荷重が後方へ移動。ブレーキペダルを踏むと、テールもシンクロして反応する。ドリフトも、きっかけを与えれば難しくない。

アルピーヌA290 GTS(英国仕様)
アルピーヌA290 GTS(英国仕様)

擬似的なLSDとして、カーブ内側の前輪へブレーキを掛け、外側へパワーを割り振る制御も旋回へ効果的に機能していた。サーキットを4周回ったが、ブレーキが加熱することはない様子。パワートレインが、セーブモードに入ることもなかった。

総じてA290は、かつてのクリオ(ルーテシア)やメガーヌの高性能版のような、敏捷性は宿さないかもしれない。だが、フォルクスワーゲン・ゴルフ GTIと重なる、大人な一体感へ没入できる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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