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BMW M850i 初試乗 英国価格10万ポンド フラッグシップ・クーペ復活

2018.10.29

磨きの足りないフラッグシップ

しかし、高速コーナーの続くような道では、どんな大型グランドツアラーと比較しても、M850iが機敏で魅力に溢れた優れたハンドリングを得ていることに気付く。リアタイヤには標準でBMW自慢のeデフが装備され、ハンドリングバランスを整えつつ、激しい操作を加えても、比較的穏やかで懐の深い反応を示してくれる。加えて過大なパワーを掛けた状態でも、トラクションや安定性が損なわれることもない。

スチールコイル製の乗り心地はどうか。平均よりは上だとは思うけれど、フラッグシップモデルとして期待するほど、洗練された繊細な乗り心地にまでは至っていない。

テスト車両のM850iにはアダプティブ・ダンパーが装備されていたが、コンフォートモードでは柔らかすぎ、高速道路程度のスピードになるとやや落ち着きがなく、リバウンドも感取されるから、ダンピング不足だと思われる。スポーツモードではボディコントロールは改善し、しなやかさも保たれてはいるが、長距離ツアラーとしては望ましくない、ゴツゴツとした感触が伝わってきてしまう。

念のためタイヤを確認してみたが、M850iが履いていたのはランフラットではなく、通常のタイヤ。ほかのグレードではランフラットが設定されるはずだ。

これらの印象をまとめると、快適性に優れ、ラグジュアリーで品のあるクーペを探すなら、メルセデス・ベンツやアウディ、ベントレーのショールームを覗いたほうが、堅実だということになる。反面、心をくすぐるダイナミズムに溢れたドライビングを味わいたいのなら、M850iは悪くない選択肢だと思う。だが、ポルシェ・パナメーラという存在もある。エアサスペンションを採用した他社のグランドツアラーも、M850iより僅かだが、優れた乗り心地と快適性を備えている。

BMWの先代8シリーズが存在した1990年から、2+2のシートレイアウトを持ったグランドツアラー・クーペを取り巻く環境や市場は大きく変化してしまった。8シリーズの復活は、エンスージャストとしては歓迎すべきことではある。しかし、グランドツアラーのハイエンドモデルとして、一目置かれる存在となるには、まだ幾つか、磨きを加える必要性があると思う。

 
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