【F1の技術を応用したHV】ルノー・クリオ(ルーテシア)Eテック 試作車へ試乗

公開 : 2020.02.03 10:20

5代目へと生まれ変わったルノー・クリオ(ルーテシア)に、F1の技術も応用したツインモーターのハイブリッド版が登場します。秋の発売に先駆けて、プロトタイプ版をフランスの一般で英国編集部が試乗しました。

ツインモーターのハイブリッド「Eテック」を採用

text:Andrew English(アンドリュー・イングリッシュ)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
もし地球環境を救うために、メルセデス・ベンツSEクラスからコンパクトカーへの乗り換えを考えているなら、車種はしっかり選んだ方が良い。二酸化炭素の排出量削減のためには、ダウンサイジング以上のことが必要となっている。

2020年に欧州で運用が始まる、一層厳しい排気ガス規制によって、コンパクトカーも厳しい立場に追い込まれる。規制に対応するには、何らかのかたちで電動化技術を採用しなければ難しい。

ルノー・クリオ(ルーテシア)Eテック・プロトタイプ
ルノー・クリオ(ルーテシア)Eテック・プロトタイプ

一方で、バッテリーを搭載した純EVに絞るという選択も、現状は価格の面で困難だ。ルノーで製品計画を率いる、アリ・カッサイも、「3万ポンド(429万円)もする純EVのハッチバックを作っても、購入者には多くの抵抗があるはずです」 と指摘している。

ルノーは既に純EVのゾエをラインナップしている。同等クラスに属する5代目クリオ(ルーテシア)には、差別化したドライブトレインが必要となるはず。そこで選ばれたのが、Eテックと呼ばれるハイブリッド。価格は2万5000ポンド(357万円)ほどに設定される予定だ。

ちなみに、クロスオーバーのいとこ、キャプチャーには、同じシステムをベースとしたプラグイン・ハイブリッド版が2020年末に追加される予定となっている。

このコンパクトカー・クラスのハイブリッドといえば、英国ではトヨタヤリス・ハイブリッドとホンダ・ジャズ(フィット)・ハイブリッドが古株。どちらも10年近く前から、優れた経済性を証明してきた。

エクストレイルのモーターに、F1技術も応用

このEテックと呼ばれるシステムに、8年ほど前から取り組んでいるルノー。フランス政府が、53.1km/L程度の燃費で走行可能なエコカーを、2010年代後半までに開発することを要求したのがきっかけ。

2014年のパリ・モーターショーには、ルノー・エオラブ・コンセプトが発表されている。空力を重視したボディには、3速クラッチレス・トランスミッションに、プラグイン・ハイブリッドを採用している。

ルノー・クリオ(ルーテシア)Eテック・プロトタイプ
ルノー・クリオ(ルーテシア)Eテック・プロトタイプ

このコンセプトモデルには、1.0L 3気筒ガソリンエンジンを搭載し、最高出力は76ps。燃費はWLTP値より甘いNEDC値で99.83km/Lで、二酸化炭素の排出量は22g/km。電気のみで64kmの走行が可能とうたわれていた。

「エオラブ・コンセプトから多くのことを学びました。Eテックに2基のモーターを搭載した理由も、コンセプトカーから来ています」 と、パワートレイン・マーケティング・ディレクターのグレゴワール・ギネットが話す。

Eテックには、F1マシンが搭載するエネルギー回収システムの技術も応用。コンパクトなルノー製ドッグクラッチ4速トランスミッションと、ツインモーターをベースとしている。組み立てはフランスのリュイッツ工場で行われる。

主体となる電気モーターは、日産エクストレイル・ハイブリッドのもの。電圧230Vで稼働し、最高出力は48ps。2基目の小さなモーターも、同じ230Vのユニットで20psを発生する。

大小どちらもクルマを駆動し、エネルギー回収も行える。だが小さなモーターはガソリンエンジンの始動もまかなう。トランスミッションを介してモーターの回転を同期させ、バテリーの充電を管理し、エンジンの始動に最低限必要なエネルギーを蓄える。

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