【ルノー製ターボマシンの代名詞】5ターボ2と5ゴルディーニ・ターボ 前編

公開 : 2020.01.19 07:20  更新 : 2021.02.02 12:41

ルノー5 ゴルディーニ・ターボと、その祖先に当たるルノー5ターボ。F-1でのターボエンジンの成功と、世界ラリー選手権への出場というタイミングが生んだ、特別なフレンチ・コンパクト・ハッチバックをご紹介しましょう。

ルノーのターボと聞いて思いつくクルマ

text:Jack Phillips(ジャック・フィリップス)
photo:Luc Lacey(リュク・レーシー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

  
ルノーのターボといえば、どんなクルマを思い出すだろう。ルノー製モデルとしては初めてのターボ車となったルノー18だろうか。F1でジル・ヴィルヌーブと熱い戦いを繰り広げた、ルネ・アルヌーが駆るV6ターボエンジンのマシンだろうか。

筆者の場合、ワイドフェンダーに大きなエアインテークがうがたれた、エレクトリック・ブルーに塗られたルノー5(サンク)ターボが真っ先に思いつく。1970年代後半のF-1ではフェラーリとの対決で上位に付けることもあったルノーだが、その勢いが5ターボにも表れている。

ルノー5ターボ2
ルノー5ターボ2

ルノー5ターボは世代を超えて語り継がれた。筆者の子供時代、1990年代の頃も、憧れの1台だった。多少角は丸められていたが、系譜を受け継ぐ2代目5GTターボも、楽しいクルマであり続けていた。

当初英国に導入された初代ルノー5は、本国では5アルピーヌと呼ばれたモデル。英国ではゴルディーニとして知られている。当時クライスラーは英国でアルピーヌという名称の利用権を保持しており、ゴルディーニという名前になったそうだ。とはいえ、ゴルディーニの方が速そうに聞こえる。

英国へ上陸したタイミングは、右ハンドル仕様のフォルクスワーゲン・ゴルフGTi導入と同時期の1979年。ゴルディーニ社によってチューニングを受けた1.4L自然吸気のクレオンフォンテ/シエラエンジンは、94psを発生させた。

最高出力は標準モデルの倍以上

ツインチョーク・ウェーバーキャブレターとボアアップによって、標準的なファミリーハッチバックの最高出力46psを倍以上に向上。0-96km/h加速時間はフォルクスワーゲン・ゴルフGTiに並べなかったものの、BMW 525やロールス・ロイス・シルバーシャドーとは肉薄。当時の試乗テストでも証明されている。

英国ではゴルディーニを名乗っていたとはいえ、アルピーヌという名前は浸透していた。1978年のモンテカルロ・ラリーで、ジャン・ラニョッティが5アルピーヌをドライブし2位に入賞していたのだ。

ルノー5ゴルディーニ(アルピーヌ)・ターボ
ルノー5ゴルディーニ(アルピーヌ)・ターボ

その時アルピーヌを破ったのは、ジーン・ピア・ニコラスが駆るポルシェ911のみ。ヴァルター・ロールは4位に入っている。

「ゴルディーニの走りは見事でした」 とラニョッティは思い返すように微笑んだ。「でもエンジンは古いものでした。よく動くクルマでしたが、タイヤが小さく、どこでもスリップやテールスライドをするほど。運転の練習台として素晴らしいクルマでしたね。多くを学びました」

一般道での走りは、通常のルノー5より引き締められたもの。前後にアンチロールバーが追加され、トーションビームは5%太い。デビューから10年程が経過していた、特徴的な傾斜のハッチバックボディは変わらずだったが、より好戦的なスタイリングになっていた。

フロントリップ・スポイラーが低い位置まで伸び、黄色いフランス・シビエ社製のフォグランプが収まる。当時4500ポンド(64万円)は安い価格ではなかったが、内容を考えれば充分お買い得といえた。

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