【新型フェアレディZ】過去の遺産だけで乗り切れるのか 少なくとも今後10年 電動化技術なしの冒険

公開 : 2020.09.29 08:28  更新 : 2021.10.22 10:14

新型日産フェアレディZ。まだプロトタイプの状態ですが、搭載エンジンは大まかに発表されています。デザインを含め、「ヘリテージ主義」の印象が強いですが、少なくとも今後10年販売されるならば、冒険です。

フェアレディZ、国産スポーツの代表

text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)

国産スポーツカーで、最も長い伝統に支えられるのはフェアレディZだ。初代モデルの発売は1969年だから、既に50年以上を経過する。

前身となるフェアレディ(最初はダットサンスポーツの北米仕様)は1960年の登場だから、60年の歴史を持つという見方も成り立つ。いずれにしても国産スポーツカーの代表だ。

新型日産フェアレディZプロトタイプ。
新型日産フェアレディZプロトタイプ。    日産

このフェアレディZがフルモデルチェンジを控え、プロトタイプ(試作車)の外観などが2020年9月に披露された。

ボディサイズは全長が4382mm、全幅は1850mmだから、全長は現行型に比べて約120mm伸びるが全幅は同等だ。

前後のオーバーハング(ボディがホイールよりも前後に張り出した部分)は短く切り詰められ、ボンネットは長い。ルーフは後方に向けて下降している。

過去を振り返ると、1969年に2シータースポーツカーとして発売されたフェアレディZは、1974年に後席を備える2by2を加え、この後は北米市場のニーズもあってグランドツーリングカーの性格を強めた。

日本の売れ筋も2by2になり、機敏な運転感覚を楽しむスポーツカーらしさは弱まった。

この後日産は業績不振に陥り、改めて原点回帰の考え方で開発されたのが、2002年に登場した5代目のZ33型だ。2シーター専用で、かつて人気の高かった2by2は用意していない。

2008年登場の6代目(現行型)となるZ34型では、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)を100mm短い2550mmに抑え、原点回帰の路線を踏襲しながらスポーツカーらしさを一層強めた。

新型フェアレディZも、Z33型、Z34型と同じ路線に沿ってデザインされている。

新型、初代の面影が散りばめられる

新型フェアレディZプロトタイプに関する日産側の説明によると、新型の外観はZ33型やZ34型以上に初代フェアレディZを意識させる仕上がりだという。

フロントマスクにはワイドなグリルが装着され、LEDヘッドランプの部分には、光の半円が備わる。

LEDヘッドランプは初代フェアレディZに追加された240ZGをモチーフにしたもの。光の半円は、カバーの映り込みを表現したという。
LEDヘッドランプは初代フェアレディZに追加された240ZGをモチーフにしたもの。光の半円は、カバーの映り込みを表現したという。    日産

これは初代フェアレディZに追加された240ZGをモチーフにしたものである。240ZGではボディの先端がさらに長く伸ばされ、丸型ヘッドランプにドーム型のカバーを装着していた。

新型プロトタイプのヘッドランプに見られる光の半円は、カバーの映り込みを表現したという。

マニアックな演出で、初代モデルへの深い愛情とこだわりを感じる。

このように新型フェアレディZの外観には、初代の面影が散りばめられている。

スポーツカーが数世代にわたって多彩な発展を遂げた後、そのデザインを初代に回帰させた例としては、アメリカのフォードマスタングシボレーカマロが挙げられる。フランスのアルピーヌA110も、往年のモデルがモチーフだ。

それにしてもなぜ、新型フェアレディZは、そこまで初代にこだわるのだろうか。

フェアレディZを初代に原点回帰させる背景には、まず現在の日産が置かれた状況があった。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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