ドライバーの心は不完全燃焼? 同じV8を積む3台 MG RV8 TVRグリフィス マーコス・マントラ(2)

公開 : 2024.03.17 17:46

1990年代に1つの黄金期を迎えた、英国のV8オープン・スポーツ ローバー社の3.9Lユニットを積んだ3台 古いシャシーを再利用 英国編集部がその魅力を振り返る

見た目通り1960年代的なマナー

マーコス・マントラのドライバーズシートへ座る。前方には、長くカーブを描くボンネット。ロッカースイッチと補助メーターが並ぶダッシュボードは、ジャガーEタイプ S3に似た趣がある。

3.9L V8エンジンは荒々しい。ペダルは重く、期待する反応のために力を込める必要はあるが、僅かに傾けるだけでスリリング。たくましいトルクが間髪なく生み出され、望まずとも、コーナーからの立ち上がりは全力になりがちだ。

マーコス・マントラ(1992〜1998年/英国仕様)
マーコス・マントラ(1992〜1998年/英国仕様)

ローバー社製の5速MTは、シフトレバーのストロークが長い。サスペンションは引き締まり、ステアリング・レシオはクイック。多少暴れても、即座にリカバリーできる一方、路面の凹凸を越えると跳ねるように揺れる。

ボディも共振を隠さない。日常的な環境で、マントラを意図通りに運転することは難しい。マナーは、スタイリング通り1960年代的。そこへ、モダンなダッシュ力と優れたブレーキが与えられている。便利なパワーウインドウも。

MG RV8は、TVRグリフィスとマントラの中間。リア・サスペンションはリーフスプリングが支え、構造としては旧式ながら、技術者は徹底的なアップデートを施した。

稀に減衰力不足を感じる場面はあるものの、乗り心地はソフトで遥かに快適。今回の例は日本から英国へ舞い戻ってきた車両で、エアコンとパワーステアリングが備わる。フォールディング・ソフトトップを背負った、グランドツアラーといえる。

最も快適志向なRV8 別次元のグリフィス

着座位置は、想像以上に高い。MGBより高いのは、肉厚なシートが理由だろう。ロールバーはなく、ウエストラインは低く、フロントガラス・フレームは細い。運転席へ座ると、上半身が顕になったような感じがする。

そのかわり、グリフィスやマントラと比べると、視認性は遥かに優れる。当時のローバー・グループは、RV8を弱点が少なく扱いやすいクラシックカーへ仕上げようとした。それを現すように、今回の3台では最も快適志向だ。

MG RV8(1992〜1995年/英国仕様)
MG RV8(1992〜1995年/英国仕様)

ところが速度が増すと、乗り心地には浮遊感がでてくる。隆起部分を通過すると、ステアリングホイールは不意に軽くなる。最高出力はマントラと同じ189psだが、車重は260kgも重く、さほど意欲的には加速しない。

0-100km/h加速は5.9秒がうたわれるが、その鋭さを体感するには、相当にエンジンを回す必要がある。そうすればキビキビ走れるものの、努力の継続は必要。惹き込まれるようなレスポンスはない。

最後にパープルのグリフィスへ。乗り比べてみると、特に動力性能で、まったく別のカテゴリーにあるといわざるを得ない。車重は1045kgで、1020kgのマントラより僅かに重いが、239psへ高められたV8エンジンが強烈なダッシュ力を見せつける。

TVRパワー社の技術者によって、レーシーでシリアスな特徴が与えられている。鋭く回転し、レッドラインまでリニアにパワーを生み出す。同じローバー由来の3.9L V8エンジンでありながら、明らかにスポーティだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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