【ライバルはスマートフォンです】 メルセデス・ベンツ新型Eクラス 3モデルを比較一気乗り

公開 : 2024.03.06 07:05

今世代で本命感が強いのはPHEV

すべて電動化され…というとドキリとするだろうが、E 200のセダンとE 220 d ステーションワゴン、あくまでICEの2モデルはISG搭載。つまりMHEVの2Lダウンサイジングターボだ。

車内に滑り込むと、ダイヤモンドステッチにパーフォレーションがシックかつスポーティな、レザーシートが迎えてくれる。内装はさすがのメルセデス・クオリティで、運転席からは運転中に見えなくなる助手席側スクリーンの機能もいい。質感もともかく素材の量感、そして広大なタッチパネルのハイテク感に支えられた豪華内装といえる。

新型メルセデス・ベンツEクラス試乗
新型メルセデス・ベンツEクラス試乗    AUTOCAR JAPAN編集部

走り出すと、動的質感は先代以上に洗練されたものの、驚くほどでもない。低速からステアリングの手応えは滑らかに軽く、無闇にずっしりした手応えで質感フィールを高めるより、むしろ速度域に合った応力と量感が、ガソリンとディーゼルとも自然なフィールで際立っている。

街中で軽快にとり回せるガソリンと、重量はやや増すがしっとり志向のディーゼル。そんなキャラの違いも健在だ。とはいえガソリンがディーゼルのようにフラットな仕事ぶりで、逆にディーゼルの軽快な回り方とパンチ力が、両者を明確に分けない雰囲気すらある。街乗りなら前者、荷物を積んでの長距離行が主なら後者という、乗り方や用途にしか、差異が見いだせないような気がしてくる。

そんな多少のモヤモヤを抱えながら3台目はセダン、PHEVことE 350 eスポーツエディションスターに乗って、薄皮が剥がれるように合点がいった。前の世代では未だディーゼルモデルに焦点が合っていた、あの本命っぷりがPHEVにまさしく感じられたのだ。具体的にどういうことか。

112kmのEV航続距離とV6のような咆哮を両立

低速域では少しゴツゴツするが、概してしなやかな脚で、速度域が上がるにつれ芯が出るようなスタビリティは、メルセデスのいつもの十八番だ。

E 350 eは唯一エアサス装着車ということもあり、車重2210kgとICEより250~370kgも重い分、よく動く足まわりが与えられている。バッテリー容量は25.4kWhもあって、コミューターEV並といえるが、電気ならではのダイレクトなレスポンスと低重心、そしてこれまたメルセデス得意の、重さを利したしっとりした乗り心地が、絶妙のバランスを醸し出す。

新型メルセデス・ベンツEクラス試乗
新型メルセデス・ベンツEクラス試乗    メルセデス・ベンツ

加えてPHEVの美点は、スムーズさに加えパワー感にある。アクセルを踏み込むと期待以上のことが起きる。まるで直4らしからぬ、V型ユニットのようにツブの揃った野太いエキゾーストノートで、エンジンが主張してくるのだ。

増幅回路ナシの音だそうだが、決して匿名性の高いエンジンではない。それでいてEVモードでの最大航続距離は112kmもあるパワートレインなのだ。

回生の具合はドライブモードによって変わるが、効率はまずまずのようで、試乗した小1時間の最後の方はスポーツモードで走行中充電したとはいえ、残量67kmでスタートしたはずなのに、むしろ70km超を指していたことにも驚いた。しかもE 350 eはChaDeMoも備え60Kwまでの中速充電もこなせるし、メルセデスは欧州の電動車として例外的にV2Hにもずっと対応している。

ひとつ難をあげつらうなら、3台ともデジタルインテリアパッケージ/アドバンストパッケージ/レザーエクスクルーシブパッケージ/AMGラインパッケージなどなど、235~260万円強のオプションが別建てとなること。

ガソリンのセダンが894万円/ディーゼルのステーションワゴンが995万円/PHEVのE 350 eが988万円ながら、実質的にいずれも1200万円強の車ということだ。為替事情もあるがアコースティックガラスまでオプションというのは世知辛いところではある。

それでも、とくにPHEVの完成度を目のあたりにすると、EQブランドの看板を下げたことでメルセデスの電動化戦略は減速するどころか、巧みに従来シリーズにそのノウハウが活かされたこと、トレンドセッターとしてEクラスの盤石の安定ぶりを、確信できるはずだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。
  • 撮影 / 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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