テスラ・モデル3 詳細データテスト 静粛性と質感は向上 やはり硬めの乗り心地 使い勝手はやや後退

公開 : 2024.03.16 20:25

走り ★★★★★★★★★☆

モデル3ロングレンジほどイージーにパフォーマンスを発揮できるクルマはめったにないし、おもちゃのような見た目ながら強烈な性能を秘めている。テスト車の0−97km/h加速は4.4秒で、2022年にテストした7万2000ポンド(約1361万円)以上するBMW i4 M50のコンマ3秒遅れに過ぎない。

4万9900ポンド(約943万円)のテスラは、直線加速性能で見ればバーゲン価格だ。追い越し加速については64−97km/hが1.7秒で、やや濡れた路面で計測したi4 M50の2.3秒を凌ぐ結果となった。

加速性能はきわめて高いが、加速のマナーはいい。回生ブレーキには走行スタイルに合わせたモードがほしいが、ワンペダル運転のチューニングには文句がない。
加速性能はきわめて高いが、加速のマナーはいい。回生ブレーキには走行スタイルに合わせたモードがほしいが、ワンペダル運転のチューニングには文句がない。    MAX EDLESTON

改良版モデル3は、たとえスロットルペダルを床まで踏み込んでも、ホイールスピンしたりパニックのようにトラクションコントロールが介入したりしながら突進していくことはない。加速はスムースで、トラクションはおおむねみごとだ。コーナーを加速しながら脱出するのも直観的で、前後モーターは1846kgの車体を悠々と走らせる。BMWの2284kgに比べて軽々といった感触だ。

ブレーキは、また話が異なってくる。停止距離は特別なものではないが、曖昧なペダルフィールが問題となり、この速いクルマに見合った自信を得るをことができない。おそらくこれは、4WDモデル特有の欠点だ。後輪駆動モデルのペダルフィールはもっといい。

明らかに欠けているのは、精巧な回生ブレーキの制御切り替えだ。それを備えるほかのEVでは、飛ばしたときにはクルマとの一体感があり、穏やかに走ればエネルギー効率を高めることができる。モデル3もそうあるべきだ。とはいえ、唯一のワンペダルモードはうまく調整されていて、ほぼ摩擦ブレーキを使わずに走り切ることができる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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