レンジローバー・スポーツSVR (助手席インプレッション)

公開 : 2014.12.22 23:40  更新 : 2017.05.29 19:20

英国内イーストナーにあるランドローバー・エクスペリエンスにてSVRの助手席に乗れるチャンスを手にしたので、以下にその際の感想を補筆しておこう。

読者の中には、あるいは筆者とおなじ考えの方もいらっしゃるかもしれないけれど、実は気がかりなことがあった。

レンジローバー・スポーツは大きい。そしてそんなクルマがいくらニュルブルクリンクを速く走れるといっても、それが直接的に ’いいクルマ’ といえるのかどうか不安だったのだ。

そしてその不安に拍車をかけるような出来事にいきなり出くわした。乗り込んで目の前に広がった光景は、まさにサーキット専用車だったのだ。バケット・シートに、鳥かごのようなロールケージ。速いのはわかるけれど、これじゃあ……。

このクルマのオリジンはあくまでラグジュアリーSUV。いったい誰が、こんな内装を喜ぼうか。しかも担当者は、ロールケージこそなくなるものの、この内装を大きく変更する予定はないという。

基準車にある7シート・オプションは用意されず、SVRは前2席、後ろ(一応)3席。写真をご覧になればお分かりかと思うけれど、後席の真ん中に座りたいとは誰も思わないだろう。近くのコンビニまで、みたいなシチュエーションが精一杯だ。

SVRは30-40kgのダイエットに成功しているとのこと。これによって幾ばくかの性能向上は見込めるものの、なかでも大きな進歩となるのは、そのエンジンだ。標準の5.0ℓスーパーチャージド・ユニットにSVR専用のチューンを施すことによって、0-100km/hダッシュも0.6秒速くなっている。

加速した際のシートが背中を叩きつけるような炸裂感に恐れおののくレベルで、呼吸が再び整うまでには少し時間が必要。防音の効いているはずのキャビンに漏れ入る、弾けるようなエグゾースト・ノートにはある種の依存性さえ感じる。

当初恐れていた乗り心地は、イーストナー特有のでこぼこ道を走っても不満になることはない。たしかに標準のレンジローバー・スポーツに比べると硬くはなっているものの、激しく揺すぶるスポーツカーほどではない。よってコーナーでも驚くほど安定しており、この手のサイズのクルマほどロールしない。

あまりの安定感に、基準車と同じ車高、同じグラウンド・クリアランス、同じオフロード・システムと聞いて一瞬言葉を失ってしまった。タイヤの接地面からバンパー下部までの角度を表すアプローチ・アングルこそ3°小さくなっているけれど、同クラスではなかなか珍しい30°を確保しているため、日常的に不便に感じることはほとんどないといっていいだろう。

標準モデルの走破性をまったくスポイルすることなく、オンロードにおけるとてつもないパワーを手にしたSVR。発表後のロードテストが今から楽しみでならない。

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