おめでとう30歳! アウディRS2でユーロトンネルを抜ける ポルシェと共作の象徴的ワゴン

公開 : 2024.09.22 19:05

グレートブリテン島と欧州大陸を結ぶユーロトンネル開通から30年 画期的グランドツーリング・ワゴン、RS2も同い年 ポルシェの手で319psと262km/hを獲得 象徴的1台へ英編集部が再試乗

ユーロトンネルと同年に生まれたRS2

1994年の夏。故エリザベス女王は、英仏海峡「ユーロ」トンネルの開通を華々しく祝った。ロンドンのヒットチャートは、ウェット・ウェット・ウェットの「愛にすべてを(ラブ・イズ・オール・アラウンド)」が賑わせていた。

これと同年に、画期的なグランドツーリング・ステーションワゴンがドイツで誕生した。アウディRS2 アバントだ。スーパーカーをひるませる、現在のRS6 アバントの原点にあるモデルだ。

アウディRS2 アバント(1994〜1995年/英国仕様)
アウディRS2 アバント(1994〜1995年/英国仕様)

上品で豪奢な車内空間を得たRS2は、英国とフランスの距離が縮まったことへ湧いた、当時の高揚した雰囲気を振り返るのに丁度いい。この土地の交通網を象徴する2つの誕生を振り返り、祝杯を上げるのに、30周年の節目はピッタリだ。

ユーロトンネルに関しては、日本では馴染みが薄いかもしれない。エンパイアステート・ビルやパナマ運河に並ぶ、近代建築を代表する巨大な偉業といえる。

グレートブリテン島と欧州大陸をトンネルで結ぶというアイデアは、19世紀末には存在していた。実際に建設が始まったのは、1988年。合計11台のボーリングマシンが投じられ、延べ1万3000名の労働者が汗を流した。

トンネルの全長は50.5km。海底部分は37.9kmあり、地球上の鉄道用トンネルでは最長。そこを潜る車載列車、ル・シャトルの長さは約800mある。英国はEUから離脱したとはいえ、経済の要衝であることは変わらない。

ポルシェの手で319psと262km/hを獲得

他方、アウディはRS2の開発で、高性能モデルは2シーターであるべきという常識へ挑戦した。もっとも、当時のアウディ80をベースにしたS2や、100をベースにしたS4は、既にステーションワゴンで支持を集めていたが。

さらに高性能なモデルを作る時、アバントは自然な流れだったといえる。投じられた技術は、ユーロトンネルほど圧倒されるものではないが、ポルシェという間違いない相手が選ばれた。その深い関係性は、同じグループ傘下になった今でも続いている。

アウディRS2 アバント(1994〜1995年/英国仕様)
アウディRS2 アバント(1994〜1995年/英国仕様)

アウディUrクワトロを由来とする2.2L直列5気筒エンジンは、ポルシェによってチューニング。大径のターボチャージャーが追加され、最高出力は319ps、0-100km/h加速は5.4秒、最高速度262km/hという俊足が与えられた。

ドライブトレインは、トルセン式センターデフを備えた四輪駆動。前後のトルク分配は、25%から75%までの変化を可能とした。ブレーキとダンパー、アンチロールバーもアップグレードされた。

スタイリングも、専用バンパーで差別化。ドアミラーとウインカーは同時期のポルシェ911用、アルミホイールは964 カップ用のものが組まれた。

発売時の価格は、4万5705ポンド。現在の金額では、約9万5000ポンド(約1824万円)に相当する。現在は走行距離が伸びた例でも、7万5000ポンド(約1440万円)を超える金額で売買されている。

生産数は約2900台で、英国へ正規導入されたのは180台。122台が、現役状態にあるようだ。今回お借りした1台は、走行距離が1万500km。博物館のコレクション級に状態が良い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブン・ドビー

    Stephen Dobie

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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