スーパーカーよりミニバンに惹かれてしまう理由 英国記者の視点

公開 : 2024.12.31 06:05

幼少期の思い出が、クルマへの愛情を育む。AUTOCAR英国編集部のチャーリー・マーティン記者は、ランボルギーニよりも、地味な初代ルノー・セニックがきっかけでクルマ好きになったと語る。

地味なファミリーカーで目覚めた「クルマ愛」

クルマを愛する人のほとんどは、家族のクルマと、それを中心とした思い出がきっかけで、クルマへの愛着を育んできたに違いない。

そうした感情は一般的に、歩き方を覚える時期から自分の名前を書けるようになるまでの間に芽生えるものだと筆者は思う。振り返ってみると、ごくありふれたクルマだったと気づくことが多いのではないだろうか。

初代ルノー・セニック
初代ルノー・セニック

筆者にとってはルノー・セニックだ。我が家のクルマは、初代のマイナーチェンジモデル(ルノーはフェーズ2と呼んでいた)だった。搭載されていたエンジンや、いつ頃から家族の一員になったのかはわからないが、マルーンレッドに塗装され、樹脂パーツも同色に仕上げられていた。なんと美しいことか。

2002年か2003年に、母が買った。筆者の弟が生まれるのに備えて、それまでのスコダ・ファビアよりも大きなクルマが必要だったのだ。

もちろん、当時の筆者はそんな実用性にはまったく関心がなかった。2歳児にとって重要なのは、面白い色をしていて、後部座席に折りたたみ式テーブルが付いていることだけ。両親がポータブルDVDプレーヤーと映画『モンスターズ・インク』のDVDを買ってきて、筆者の目の前に置いてくれたとき、セニックにすっかり魅了された覚えがある。

思い出のなかには、休暇で田舎のキャンピングカーパークまで夜通しドライブし、外のオレンジ色の街灯のまぶしさにも負けず映画を観たというものもある。両親も、そのおかげで(比較的)静寂を手に入れられたことを喜んだに違いない。

クルマが「ブーン、ブーン」と走るものだという程度の知識しか持っていなかった筆者にとって、あのペラペラの折りたたみ式テーブルはまさに画期的なものだった。

最近出た新型セニック(SUV)も素晴らしいクルマであることは間違いない。同僚たちからポジティブな意見をたくさん聞いているので、それは確かだ。しかし、フラットな作業トレイとダイニングエリアがないので、筆者には魅力が感じられない。まったく新しい製品に昔の名称が再利用されることに、腹を立てるタイプではない。フォード・カプリやプーマががっしりとしたSUVになったとしても、筆者はまったく気にならない。しかし、テーブルのないセニック? それは少しばかり気になる。

残念なことに、2005年のある朝、何の説明のないままエンジンが故障したことで、我が家のセニックとの時間は突然終わってしまった。高速道路でドラマチックな故障をしたわけでもなく、我が家のアパートの前に駐車していたときにあっけなく壊れたのだ。

多少の議論の末、ルノーがクルマを買い戻し、試乗車として用意していた1.2Lのクリオを大幅値引きで提供してくれた。母は13年間、6.5万km乗ったが、セニックではなかった。

また復活させてくれ。今度はちゃんとやってください、デ・メオさん。

記事に関わった人々

  • チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    役職:編集アシスタント
    2022年よりAUTOCARに加わり、ニュースデスクの一員として、新車発表や業界イベントの報道において重要な役割を担っている。印刷版やオンライン版の記事を執筆し、暇さえあればフィアット・パンダ100HP の故障について愚痴をこぼしている。産業界や社会問題に関するテーマを得意とする。これまで運転した中で最高のクルマはアルピーヌ A110 GTだが、自分には手が出せない価格であることが唯一の不満。
  • 林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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