エンジン廃止を再考する欧州 マルチパワートレインへ舵、予想下回るEV普及率
公開 : 2025.01.20 06:05
ステランティス傘下のオペル/ヴォグゾールはEVの普及が予想を下回ったため、エンジン車の段階的廃止を見直している。以前は2024年に最後のエンジン車を発売予定だったが、方針転換を迫られた。
将来的な電動化は間違いないが…
ステランティス傘下のオペルとヴォグゾールは、2028年の完全EV化計画を見直している。欧州のEV市場は、当初の予測とは大きく異なることを認識しているためだ。
この2社は車種を共有し、ドイツなど欧州大陸ではオペル、英国ではヴォグゾールとして販売している。

両社は2022年、最後のICE(エンジン)車を2024年に発売すると発表し、2023年まではその目標にコミットしていた。しかし、フロリアン・ヒュットルCEOはAUTOCARの取材に対し、当面の間はパワートレインを柔軟に提供していくと語った。
「我々、欧州連合、そして多くの関係者が数年前に立てた仮説と今日の現実を比較し、再評価するならば、現実がそれに追いついていないと言わざるを得ないだろう」
オペル/ヴォグゾールのEV移行スケジュールを再考しているのかと尋ねられたヒュットル氏は、「その質問については、少し立ち止まって考える必要がある。注目したいのは、当社はすでに完全な電動化を実現しているという事実だ」
また、新型クロスオーバー車のフロンテラはガソリン仕様でもEV仕様でも2万4000ポンド(約455万円)未満で購入可能であること、SUVのグランドランドは最大700kmの航続距離を実現していることを強調し、これらはEV普及に向けた「大きな一歩」であると述べた。
ヒュットル氏はICE廃止の新たな時期を提示することは避けたが、「非常に明確な戦略がある。オペル(およびヴォグゾール)は、間違いなく将来的には完全電動化していくと思う」とした。
「現在、当社はマルチエネルギー戦略環境という好機に恵まれている。つまり、当社の有名なクルマすべてに選択肢を提供できるということだ」
英国ではEV販売が好調だ。2024年には、ヴォグゾールが約8万台弱の新車を販売したが、そのうち約1万5900台がバッテリー駆動で、全体に占めるEVの割合は20%弱だった。
しかし、欧州市場全体でのEV普及率は依然として14%にとどまる。ヒュットル氏は、普及は政府の支援政策に大きく依存していると話す。
「例えばドイツは、欧州最大のEV市場であり、最大の自動車市場でもあったが、2024年にはその地位を失った。これは、英国がギアを上げていったのに対し、ドイツが追い越せなかったことを示している」
「EVの動向がいかに国家の支援に左右されやすいか、目の当たりにしてきた。このような環境では、当然ながら一歩一歩を慎重に評価する必要がある」
「(オペルと)ヴォグゾールにとって、未来は間違いなくEVだ。しかし、マルチエネルギー戦略のおかげで、市場ごとに異なる普及スピードに対応することができる」
ヒュットル氏は、欧州におけるEV普及を加速させるためには、3つの要素が不可欠であると考えている。「魅力的な製品ラインナップ」、「順調に発展している充電インフラ」、「政府による明確な方向性」だ。
同氏はオペル/ヴォグゾールがすでに幅広いラインナップのEVを販売していること、そして各国における充電器の設置支援を行っていることを挙げ、電動化への取り組みを強調した。「これは、当社の責任の一部であると考えている」
また、英国政府によるZEV規制と2030年を期限とするICE車の新車販売禁止も、同社が遵守すべき期限として有益であると歓迎している。「方向性は極めて明確だ。政府が明確な方向性を打ち出すのは喜ばしいことだ」
同氏は「あらゆる種類の支援システム」が消費者をEVに切り替えさせる効果的な手段であると述べ、「特に、より幅広い層にEVの利用を可能にするシステム」が重要だと付け加えた。
「これらすべて、あるいはそのほとんどが揃ったとき、電動化への道が開ける」