確かに4気筒より好燃費! マツダCX-60 E-スカイアクティブDへ試乗 ロードスターへ通じるDNA

公開 : 2025.02.12 19:05

冷間時に大きい音振 大トルクが美点

タッチモニターを得たインフォテインメント・システムは、ロータリー・コントローラーを維持。アップル・カープレイとアンドロイド・オートには、ワイヤレスで対応する。ネイティブ・システムも含めて、停止時のみ操作できる。

ソフトの動作は良好で、グラフィックは落ち着いていて鮮明。ショートカットボタンも用意され、ナビの操作性も優れる。上級グレードに組まれるボーズ社製でなくても、オーディオの音質は良いと感じた。

マツダCX-60 E-スカイアクティブD 3.3 RWD エクスクルーシブ・ライン(英国仕様)
マツダCX-60 E-スカイアクティブD 3.3 RWD エクスクルーシブ・ライン(英国仕様)

それでは、英国の公道へ出てみよう。ボンネットの内側には樹脂製の防音材が2枚入るが、低域でもサウンドはディーゼルらしいもの。エンジンオイルの温度が上昇するまでは、音振が大きめ。それもあって、フィーリングは若干オールドファッションだ。

充分に温まれば、制御が変化し滑らかに転調。レッドラインまでストレスフリーに上昇し、サウンドも良くなる。

大きな美点といえるのが、中域でのトルク。クルマらしいメカニズムの存在感が嫌いでなければ、好感を抱けるはず。走行中は充分にスムーズで、バッテリーEVのような淡泊さとは対照的だからだ。

X3が積む2.0Lディーゼルが190psなのに対し、CX-60の3.3Lは199psで低く思えるが、これは意図的なもの。後輪駆動のCX-60の車重は四輪駆動のX3より57kg重いものの、トルクのおかげで、前者の方が0-100km/h加速は0.7秒も速い。

マイルド・ハイブリッドだから、下り坂などではエンジンは積極的に停止する。再始動時は、もう少し上品でも良いだろう。

人馬一体の運転の楽しさ 足を引っ張る乗り心地

8速ATの仕事ぶりは良好。シームレスに、適したタイミングでギアを選んでくれる。同じユニットを積む、プラグイン・ハイブリッドのCX-60での印象とは大きく異なる。

バイワイヤで制御されるブレーキは、お手本のよう。ペダルの踏み心地には安心感があり、必要な制動力を引き出しやすい。濡れた路面でも、アウディSQ5と同等の制動距離を発揮してくれた。

マツダCX-60 E-スカイアクティブD 3.3 RWD エクスクルーシブ・ライン(英国仕様)
マツダCX-60 E-スカイアクティブD 3.3 RWD エクスクルーシブ・ライン(英国仕様)

操縦性には、2つの特徴がある。褒めるべき点は、マツダMX-5(ロードスター)へ通じるような運転の楽しさがあること。

ステアリングの反応は、近年ではスロー気味だが、これはマツダ流の味付け。駐車場などの低域では、腕を沢山動かす必要がある。それでも、常用域での反応は自然。感触に優れ、正しい舵角を与えやすい。

マツダはCX-60でも人馬一体を掲げるが、後輪駆動版でTSCオフにすると、アクセルペダルの加減でコーナリングラインの調整が僅かに可能。SUVでありながら、操る充足感を得られる。

ただし、これは路面が平滑な場合。英国のように管理が悪い環境では、落ち着きが乏しくなる。特にリア側の衝撃吸収性が優れず、大きな凹凸を超えるとタイヤは暴れてしまう。旋回時の、不安定さにも繋がる。

乗り心地も褒めにくい。路面次第では、頭が揺さぶられるような振動が届く。高速道路でも、落ち着きが増すことはない様子。CX-60のプラグイン・ハイブリッドとは異なり、きしみ音などは感取されなかったが。

ロードノイズも少し大きめ。計測では、110km/h巡航時の音量は、X3より4dBA大きかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事