CX-60ディーゼルを通じて考えるマツダの現在地と未来【日本版編集長コラム#51】

公開 : 2025.10.12 12:05

AUTOCAR JAPAN編集長ヒライによる、『日本版編集長コラム』です。最近乗ったクルマの話、取材を通じて思ったことなどを、わりとストレートに語ります。第51回はCX-60のディーゼルを通じて感じた、マツダの現在地と未来です。

最近、マツダが変わりつつある

ロータリーエンジンをBEVのレンジエクステンダーとして搭載した『MX-30ロータリーEV』、ソフトトップとハードトップという2台の『ロードスター』と続いた最近のマツダ話。最後に登場するのは『CX-60』のディーゼルである。

今回、マツダの話をテーマとしたのは理由があって、どうも最近、変わりつつあると感じているからだ。

今回の取材車は『マツダCX-60XDエクスクルーシブ・モード』。
今回の取材車は『マツダCX-60XDエクスクルーシブ・モード』。    平井大介

マツダは1980年代後半から1990年代にかけて展開した多チャンネル化の失敗などを教訓に、近年はスモールプレーヤーであることを意識し、会社規模に合わせて身の丈にあったビジネスを展開してきた印象だ。

ラインナップをいたずらに拡大せず、一括企画で効率よく開発、生産する様子を取材の現場で見てきて、いいところを狙っていると思っていた。

だから、2021年にラージプラットフォームで高級路線を狙った戦略を発表した時、少し心配になった。中身をほぼ全て新開発し、CX-50、60、70、80、90を一気にワールドワイド展開とは、言葉を選ばずに書けば、『身の丈』にあっているのかと。

国内ビジネス構造変革の方針

そこから約4年半がすぎ、今年6月19日に『国内ビジネス構造変革の方針を公表』という発表があった。簡単に書けば、販売網を主に都市部の優先地域中心に再構築し、ブランドにフォーカスしたマーケティング投資を行い、店舗支援を行う新会社『マツダビジネスパートナー』を設立する、というもの。

発表に関するプレゼンを聞いていて思ったのは、「これはラージプラットフォームを成功させるための戦略だ」ということ。これまでにない高級車であるCX-60やCX-80を数多く販売するには、現場への投資が不可欠というわけだ。

8月中旬に開催されたマツダら4社による『次世代バイオディーゼル体験会』。
8月中旬に開催されたマツダら4社による『次世代バイオディーゼル体験会』。    平井大介

その効果は少し先になると思うが、CX-60の販売自体は伸びてきている。日本自動車販売協力連合会のデータによれば、今年は4~9月で4497台と前年同期比152.9%になり、全体のランキングも44位に入っている。そう言われれば最近、筆者の自宅がある静岡県東部でもだいぶ見かけるようになった。

そんなCX-60の中からディーゼルを試乗車に選んだ理由がある。それは8月にいすゞ自動車、平野石油、マツダ、ユーグレナの4社が合同で開催した、法人企業、官公庁に向けた『次世代バイオディーゼル体験会』に参加したことだ。

イベントの詳細は割愛するが、既にCX-60、80がバイオディーゼル対応車種であることを初めて知り、バイオディーゼルの現在地とハードルの高さを理解できた。

マツダはEVのトップランナーにはならないと宣言する一方で、マルチソリューションとして様々な選択肢を残さなければいけない現状に、自動車メーカーは本当に大変な時期にきているなぁと実感したのである。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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