英国の風景に溶け込む中国製輸入車

今年は、多くの新しい中国車ブランドが英国のショールームに登場する年になるかもしれない。

長年にわたって新しい材料がほとんど加えられてこなかったスープに、突如としてジェイクー（Jaecoo）、ハヴァル（Havals）、リープモーター、シャオペン（Xpeng）、IMなど、知っておくべきブランドが次々と投入されることになる。

そうなると、我々はセレス（Seres）がなぜ複数形なのかを理解し、スカイウェル（Skywell）がエアコンではなくEVを作っているということを皆に説明する必要がある。

中国から輸入されるEVに対する欧州連合の関税により、これらのブランドが予想よりも早く英国市場に引き寄せられ、我々はいち早く中国車の専門家になるかもしれない。

英国は中国車で溢れかえることになるのだろうか？ そう言う人もいるだろう。しかし、大丈夫だ。粗悪品は買わないと決めればいい。どれが粗悪品なのかわからないという人も、どこで調べればいいかはご存知のはずだ。

もちろん、英国人はすでに良いクルマを買っている。英国自動車製造販売者協会（SMMT）の調査によると、2024年の英国の新車販売台数トップ5に、ある中国製輸入車が食い込んだ。MG HSである。

MGは、この内燃機関搭載の中型SUVを、アウディA3やフォルクスワーゲン・ポロよりも多く販売した。中国で製造される一部のBMW、シトロエン、スマート、ボルボなどの輸入車は、MGに近づくことさえできなかった。

筆者はこのような重要な成功を収めたクルマに直接触れたことがなかったので、最近、このクルマに乗ってみるのが自分の責務であると考えた。

少しは啓発されたし、驚きもしたが、意外性はそれほどでもなかった。なぜなら、筆者は他の現行のMGモデルを数多く試乗しており、同ブランドがもうジャンク価格で低水準の製品を売り込むことはないと知っていたからだ。

もし誤解している人がいるなら、HSに数日乗ればその誤解はすぐに解けるだろう。

何よりもまず、低価格ブランドらしい「コストパフォーマンスの高いクルマ」である。実用性と広い車内空間を備えたファミリー向けSUVで、例えばアウディQ5と比較できるが、価格はスコダ・カミックと同等だ。

MGは実際、キア・スポーテージ、ヒョンデ・ツーソン、シトロエンC5エアクロスのような車種とHSを競合させているが、価格面ではこれらのライバルよりも安く、また、実用スペースでもほぼ上回っている。

シートは快適で、トランクは広々としており、ボディデザインはすっきりとしてモダンで、嫌味がない。ダッシュボードの低品質なモールディングを除けば、HSには安っぽさや質素さはほとんど感じられない。

MGは、コラムシフト、ウィンドウスイッチ、ドアハンドル、小物入れなど、ユーザーが日常的に触れる部品に費用をかけることを学んだ。鼻持ちならない表現かもしれないが、これらはすべて「欧州水準」と呼ぶべきものだ。

では、運転の感覚はどうだろうか？ AUTOCARによる昨年の1.5Lターボガソリンエンジン搭載のHSの試乗レビューでは、エントリーグレードには性能の粗雑さや不格好さ、鈍重さが感じられると指摘されている。それは、10年前のMGを少し思い起こさせる。

しかし、筆者はよりパワフルなPHEVモデルを試乗した。このモデルは、1.5Lのガソリンエンジンと210psの電気モーター、そして2速ATを搭載している。静かで速く、頼もしく、実に快適だった。

電気のみで走行できる距離が長いことは言うまでもない（これがHSが売れている理由かもしれない）。MGは約120km走れると謳っているが、3万2000ポンド（約600万円）以下で購入できるクルマとしては本当に素晴らしい数値であり、HSには（社用車などの）フリート顧客を強く惹きつける魅力がある。

現実の走行環境では、ガソリンエンジンが作動するまでに90kmから105kmのEV走行が可能である。ハンドリングも良好で、運転支援システムとタッチスクリーン式インフォテインメント・システムの使い勝手の悪さを除けば、まったく問題なく運転できる。

それで、筆者が得た結論は、HSがいかに「真っ当」でバランスの取れた現代的なクルマであるかということ、そして、充電しようが、表向きの複合燃費を気にかけようが、価格を気にしようがしまいが、標準的な日常使用にいかに耐えられるかというものだった。

その成功は、買収ではなく、努力によって掴んだものであることは明らかだ。

画像　かつての「粗悪」なイメージは払拭されたか【MG HS 1.5 T-GDIトロフィー（英国仕様）を写真で見る】　全18枚