【潮目が変わった?】5年ぶりキャデラック国内発表!『リリック』登場で感じたラグジュアリーEV市場の新風

公開 : 2025.03.10 07:05  更新 : 2025.03.10 19:17

5年ぶりのキャデラック国内発表となる、『リリック』のジャパン・プレミアが行われました。会見には本社からグローバル担当の副社長も参加し、日本におけるブランドの重要性を強調しています。桃田健史による発表会レポートです。

日本におけるEV新時代を予感させる

これは単なる新車発表会ではない。

都内で3月7日に開催されたキャデラックの新型EV『リリック(LYRIQ)』のジャパン・プレミアは、日本におけるEV新時代を予感させる瞬間であった。

5年ぶりとなる日本発表会でお披露目されたキャデラック・リリック。ラグジュアリーなBEVだ。
5年ぶりとなる日本発表会でお披露目されたキャデラック・リリック。ラグジュアリーなBEVだ。    上野和秀

決してリリックを過大評価するのではなく、ゼネラルモーターズ(以下、GM)が日本を含めたグローバルで展開するプレミアムEVにおけるブランド戦略が、EV市場全体に対するインパクトとしてとても大きいという意味だ。

実際、アメリカGM本社のホームページでは同日、『A new era for Cadillac in Japan (日本におけるキャデラックの新時代)』というタイトルで、日本におけるキャデラック・ブランドの事業方針が詳しく紹介されている。

会見には、アメリカGM本社からグローバル・キャデラック部門のジョン・ロス副社長も参加し、日本におけるキャデラック・ブランドの重要性を強調した。それによれば、2024年の実績でリリックは、アメリカ内で最多販売のラグジュアリーEVであるという。

また、過去18ヵ月間でキャデラックは、欧州ではフランス、ドイツ、スイス、スウェーデン、オーストリア、オセアニアではニュージーランドでEV販売を開始するなど、EV事業を急拡大。特に右ハンドルの対象国向け仕様を重要視しており、そうした大きな視点のなかで今回、日本での事業戦略発表となった。

GMによれば、キャデラックが日本で最初に販売されたのは、今から110年前の1915年(大正4年)。その後、日本人の多くが抱いてきた『キャデラック=アメリカンラグジュアリー』というイメージが今、進化しようとしている。

合計4車種の最新EVを日本市場で一気に投入

今回の発表会場には、2種類のキャデラックEVが展示された。メイン会場と屋外には、リリック。その他、屋内にはキャデラックEVラインアップではエントリーモデルである『オプティック(OPTIQ)』の姿があった。

今回、日本仕様の技術的な詳細や価格が公開されたのは、リリックのみ。ボディサイズは、全長4995mm、全幅1985mm、全高1640mm、ホイールベース3085mmだ。

キャデラックEVのエントリーモデルとなる『オプティック』も展示、こちらも日本導入予定。
キャデラックEVのエントリーモデルとなる『オプティック』も展示、こちらも日本導入予定。    上野和秀

デザインは『いかにもキャデラック』と感じさせる、独自性の強いラグジュアリーな雰囲気がある。コクピットは、右ハンドル仕様で再構築された。骨格はEV専用『アルティウム』で、日本仕様はRWD(リア駆動)ベースのAWD(四駆駆動)のみの設定となる。

最高出力は384kW、最大トルクは610Nm。バッテリー容量は95.7kWhで、満充電での航続距離は510km。日本を主体とする急速充電規格のCHAdeMO(チャデモ)に対応する。GMジャパンによれば、約1年をかけて全国各地のCHAdeMO方式・急速充電器に対して、アルティウム制御システムの正常作動を確認済みだという。

リリックの指定価格は税込1100万円で、2025年5月以降にデリバリーを開始する。現時点で販売目標数は公開されていない。

その後、2026年には今回展示されたオプティックのほか、アメリカでは『ベビー・エスカレード』とも称される3列シートの『ヴィスティック(VISTIQ)』、さらにハイパフォーマンスモデルの『リリックV』という、合計4車種の最新EVを日本市場で一気に投入する。

ただし、GMジャパンによれば、キャデラックは完全にEVシフトするのではなく、今後もエンジン車の供給を続けるという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 撮影

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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