三菱自動車が東京大学らと取り組む、BEVのプラグ&チャージ実現【概要、本質、期待!自動車ニュースを読む】
公開 : 2025.03.11 07:05
毎日のように発信されるプレスリリースの中から1本をピックアップし、概要、本質、期待の3項目で分析するコラムです。ジャーナリスト橋爪一仁が、三菱自動車工業が東京大学らと取り組む、BEVの『プラグ&チャージ』実現について解説します。
【概要】東京大学の研究をベースに『プラグ&チャージ』技術を開発
三菱自動車工業、東京大学生産技術研究所、ユアスタンド、日東工業の4者は、BEV(バッテリー型電気自動車)充電時の電流波形変調とコネクティッド技術を組み合わせ、充電カードや充電アプリ等を使わずに充電を可能にする『プラグ&チャージ(PnC)』を研究開発中だ。
BEV普及が各種課題を抱える中、BEVと充電器の間に相互の個体識別機能が備わっていないことに着目。この手間を解消するために、『充電プラグを挿し込むだけでBEVがどの充電器に接続されたか特定でき、コネクティッド技術によるデータ連携で認証が行われ自動的に充電開始される仕組み』として、東京大学の馬場博幸特任准教授が考案した『PnC実現技術(東京大学が国際特許出願済)』の実証実験をベースに、その可能性が確認された。

具体的には、日東工業のMode3普通充電器『Pit-2G』と三菱自動車工業の『ミニキャブEV』等からそれぞれ送信される、充電時の電流波形データをユアスタンドのシステムで連携。さらに東京大学のシステムを用いて、照合する仕組みを共同構築し、成果としてBEVに充電プラグが挿しこまれた際にBEVと充電器から送信される電流波形が照合され、充電開始される応答性をミニキャブEVで確認。
また、別の場所にある充電器でBEVを充電する際に、それぞれに異なる変調をさせた電流パターンを与え電流波形を照合したところ、どの充電器にどのBEVが接続されているかも特定でき、認証可能であることも確認された。
【本質】BEV普及課題の解決に向けた新技術の研究開発
自動車の価値を定量的に示す指標のひとつに『残価』があるが、現在のガソリン車とBEVを比較した際、車両そのもの以外に、利便性へ影響のあるインフラなど残価へ影響することがBEVの特徴となっている。
つまり、車両だけを研究開発してもBEVの全体的な価値が向上しないため、インフラ等も含めた研究開発が必要となるのだ。そういった中で今回のように、ユーザーの利便性向上に向けた取り組みはとても重要で、2016年にダイムラー社(現メルセデス・ベンツ社)によって提唱された、『CASE』(コネクティッド、自動運転、シェアとサービス、電動)の相互関係の中で、コネクティッドが電動を支える部分に合致している。

東京大学の『PnC実現技術』研究をベースとする今回の取り組みは、従来の充電カードや充電アプリといったユーザーの手元にある機能(ツール)を使わずに、充電器や車両側に、充電時の電流波形変調をコネクティッド技術で照合し認証する機能を持たせている点が新しく画期的だ。
ユーザーIDによるデータプラットフォームが拡大を続け、アプリ開発が加速する今日の自動車産業において、BEVの老舗といえる三菱自動車工業がアプリ側でなく、しかも産学連携で取り組むことも興味深い。
既に主流の充電カードや充電アプリ等の認証セキュリティ強化(段階認証)や各種システムトラブル時のバックアップとして、信頼性を向上させる選択肢としてのニーズも大きいと考えられる。