【第7回】森口将之の『もびり亭』にようこそ:僕がモーターサイクルに乗る理由

公開 : 2025.04.09 17:05

モビリティジャーナリストの森口将之が、モビリティの今と未来を語るこのブログ。第7回は、二輪車の世界に注目。楽しさと危険が隣り合わせな趣味の乗り物と思われがちなモーターサイクルですが、社会貢献にも役立つ存在です。

危険を教えてくれることもメリット

4月になっても冬のような寒さがやってきたり、気候変動がリアルであることを実感している昨今ですが、春という言葉を聞くと、個人的に気になるのがモーターサイクルです。

僕は普通自動車より前に自動二輪車の運転免許を取得し、今もトライアンフ・ボンネビルとホンダ・スーパーカブという大小2台を所有しているので、贔屓目があるのかもしれません。でも暖かくなるとモーターサイクルが恋しくなると思うのは、自分だけではないでしょう。

写真は筆者所有のトライアンフ・ボンネビル。春風に誘われて、サドルにまたがりたくなるライダーは多いのではないだろうか。
写真は筆者所有のトライアンフ・ボンネビル。春風に誘われて、サドルにまたがりたくなるライダーは多いのではないだろうか。    森口将之

ではなぜ乗り続けているのか。3月下旬に東京ビッグサイトで開催された第52回東京モーターサイクルショーの様子を紹介しながら、僕がモーターサイクルに乗り続ける理由を書いていきたいと思います。

まずは、ほかの乗り物にはない魅力があることです。全身で風を受け、全身を使って操縦し、全身で俊敏な動きを体感する。その感覚は、クルマでは到底味わえないものです。

もちろん危険ではあります。警察庁のデータによると、二輪車乗車中の交通事故死者数は、全体の約2割に達しています。国内の二輪車の保有台数が、自動車の約8分の1にすぎないことを考えれば、かなり高い確率です。

でも個人的には、乗り物が持つ危険性を教えてくれることも、メリットだと思っています。モーターサイクルで走っていると、クルマの何倍もの注意力と判断力を必要とすることがわかります。なので疲れます。でもそれを理由に、危険を遠ざけたくはありません。むしろ危険と向き合うことが大切だと考えているのです。

四輪より環境負荷の低い二輪

クルマより環境負荷が低いことも、忘れてはいけないモーターサイクルの利点です。乗用車の平均乗車人数は約1.3人と言われています。つまりモーターサイクルでも賄える数字です。1名乗車の乗用車をすべて二輪車に置き換えれば、CO2の排出量を抑えることができるし、渋滞も減らせるはずです。

なかでも注目してほしいのは、路上占有面積です。ホンダ同士で比べると、350ccエンジンを積むGB350の全長×全幅は、コンパクトカーのフィットのおよそ4分の1です。どちらもひとり乗りだったら、道路も駐車場も、4分の1で済むことになります。渋滞解消はもちろん、駐車場に使っていた場所を公園に置き換えるなど、まちづくりでもメリットが出てきそうです。

第52回東京モーターサイクルショーで、ホンダは電動過給器付きV3エンジンを公開した。
第52回東京モーターサイクルショーで、ホンダは電動過給器付きV3エンジンを公開した。    森口将之

東南アジアで二輪車の人気が根強いのは、渋滞があってもスピーディに移動できる機動性が大きいからだと想像できるし、欧州で日本よりモーターサイクルを見かけることが多いのは、路上占有面積の少なさや環境負荷の小ささも評価しているからだと感じています。

そしてもうひとつ、二輪車は日本が世界のマーケットを支配する、数少ないジャンルであることにも触れておきましょう。世界のトップメーカーはもちろんホンダで、昨年で言えばトヨタの四輪車の2倍弱になる約2000万台を販売。トヨタの世界シェア1割強も立派ですが、ホンダの二輪車でのそれはなんと4割です。

これにヤマハスズキカワサキを合わせた日本車全体で見ると、過半数近くに達します。当然ながら二輪車業界をリードする存在です。なので世界をリードする技術やデザインを、次々に送り出してきています。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。

森口将之の『もびり亭』にようこその前後関係

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