「EVはガソリン車よりも静か」は本当? テストで見えた興味深い事実 英国記者の視点

公開 : 2025.04.23 18:45

「EVはエンジン車よりも静か」という言葉をよく耳にしますが、実際に走行中の車内騒音を計測してみると、興味深い事実が見えてきます。数多くの電動車をテストしてきたAUTOCAR英国記者のコラムです。

パワートレインの種類よりも大きな要素

筆者は、英国にあるホリバMIRA社のテストコース、通称『ツイン・ホリゾンタル』で非常に高い速度を出したことが何度もある。しかし、今回のような体験はほぼ初めてだった。

最近試乗したベントレー・コンチネンタルGTスピード・ハイブリッドは、270km/hを超える速度で走行しながら、同時に筆者の甘やかされて育った大きな臀部を優しくマッサージくれたのだ。

V8 PHEVの新型ベントレー・コンチネンタルGTスピード・ハイブリッド
V8 PHEVの新型ベントレー・コンチネンタルGTスピード・ハイブリッド    AUTOCAR

筆者はマッサージを頼んだ覚えはないが、とあるシートの機能をオフにするのを忘れていただけだ。この2つのことを同時に実現できるクルマは、そう多くはないだろう。

皮肉なことに、オプションのマッサージシートは実際にはオンになっていなかった。筆者が体験したのは、ベントレーが「姿勢調整」と呼ぶ、長距離走行時に腰の負担を軽減するために標準装備されている機能であった。

このベントレーの最新モデルの詳細については、後日試乗記にて紹介したい。現時点では、コンチネンタルGTスピードが、ベントレーらしい包み込むような快適性、稲妻のような速さ、特別感に満ちたグランドツーリング体験を継承するにふさわしい1台であるということを、お伝えしておく。

2462kgの車重と782psの出力、そしてV8エンジンを中心とするプラグインハイブリッド・パワートレインを備え、今後数年間は高い人気を集めることになりそうだ。

そして、電気のみでの走行が可能で、瞬時にピストンエンジン駆動に切り替わるPHEVであることから、筆者は次のような疑問を抱いた。どちらが静かに走れるのだろうか、と。

答えは明らかだろう。結論から言えば、電気だ。しかし、その差の大きさには驚かれるかもしれない。電気で走行できるクルマはそうでないクルマよりも静かで洗練されている、EVはすべて静かである、という誤解が世の中には存在する。

しかし、騒音計を使って実際に音を測定してみると、事実はかなり複雑であることがわかる。

AUTOCAR英国編集部の車内騒音試験はすべて、加速性能のベンチマーク測定と同じホリバMIRA社のストレートコースで実施している。そのため、試験当日の条件は多少異なる場合があるが、入力要素は可能な限り一定に保っている。

新型コンチネンタルGTスピードでは、エンジンを停止した状態で80km/hで走行中、騒音計は61.7dBA前後で変動したが、エンジンを始動しても、わずか62.2dBA程度までしか上昇しなかった。

今改めてこの数値を読むと、その差に戸惑ってしまう。耳は嘘をつかないからだ。

エンジンが始動した瞬間が明確にわかり、アイドリング状態でもキャビンの環境騒音レベルに与える違いを容易に感じ取れる。しかし、騒音計はまるで興味のない思春期の少年のように「別に」と肩をすくめて、ほとんど変化を示さない。

コンチネンタルGTスピードは、言うまでもなく、メカニカルノイズの遮断に関して特に高い水準を誇る、現代の高級車だ。一般的なPHEVでは、おそらくさらに大きな差があるだろう。

とはいえ、80km/hで走行しているクルマの場合、車内で最も大きな騒音源は通常、エンジンではない。ロードノイズや風切り音の方が顕著だ。

それを証明するデータがいくつかある。例えば、メルセデス・ベンツEQSは非常に静かなクルマであり、80km/hでの車内騒音はわずか58dBAだが、これは単にEVであるということよりも、13万ポンド(約2400万円)もする高級メルセデスであるということに大きく関係している。

同じ速度で、クプラタバスカンEVは61dBAの車内騒音を発するが、ダチア・ダスター・ハイブリッドも同等だ。

BMW 120 Mスポーツは62dBAという非常に優れた数値で、ガソリン車の新型アウディS5は63dBAだが、EVのキアEV6とアウディQ6 eトロンはそれぞれ65dBAである。

EVに乗れば自動的に耳が喜ぶと考えているなら、ちょっと慎重になった方がいい。耳が喜ぶ可能性はあるが、それは適切なモデルを選んだ場合に限られる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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