【現役デザイナーの眼:レクサスES】高身長を感じさせないデザイン力

公開 : 2025.05.27 08:05

新世代レクサスとしての表現

顔まわりのデザインは、レクサスRZでも採用されている、白黒反転でのスピンドル表現が特徴的です。グリルの部分をボディ色にし、その外側を黒にすることでBEV時代のレクサスの顔を表現しているのですが、RZは比率があまりダイナミックでは無かったせいか、この構成に魅力を感じませんでした。

しかしこのESは、しっかりローアンドワイドな造形になっており、新世代のレクサスの顔に相応しいデザインだと感じます。この辺りは2023年のジャパン・モビリティショーで発表されたコンセプトカー『LF-ZC』にも通ずるデザインです。

全高が高い車とは思えないほどスタンスの良さを感じるリアビュー。リアタイヤに向かうドアのリフレクションにも注目。
全高が高い車とは思えないほどスタンスの良さを感じるリアビュー。リアタイヤに向かうドアのリフレクションにも注目。    レクサス

また、ボンネット両端の造形は、普通やらない(考えつかない)ような立体構成になっており、細かいところですが、この辺りがレクサスの真骨頂とも言えそうです。

リア周りはスタンス重視とも言える、比較的シンプルな構成です。リアフェンダーのボリュームがトランクの中心部分に向かうデザインはNXやRXでもお馴染みのもので、躍動感とスタンスを両立させている秀逸なデザインだと思います。

今回はエクステリアだけの話になってしまいましたが、新型レクサスESはデザイン的にかなり不利なパッケージにも関わらず、それを感じさせないシルエットや、セダンでは珍しい立体構成、またはボリュームある面とシャープな線のコントラストなど、新世代のセダンを具現化しています。

大柄なボディは、メイン市場である中国や北米はともかく、日本では持て余すサイズにはなりましたが、もしかしたら元気のない『LS』に取って代わる、レクサスのフラッグシップになり得るクルマではないでしょうか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間に様々な車をデザインする中で、車と社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

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