半世紀を経てモンテカルロへ集結 3台のサンビーム・タイガー(1) 共感を呼んだV8の興奮

公開 : 2025.06.21 17:45

半世紀前にモンテカルロ・ラリーを走った、ワークスチームのサンビーム・タイガー V8エンジンの英国製クーペ 生き抜いた3台が再び集結 もっと好成績を残せた実力 UK編集部がレポート

モナコへ集結した半世紀以上前のラリーマシン

COVID-19が収束していった2023年の初頭、第25回モンテカルロ・ヒストリック・ラリーが開催された。一部のサンビーム・オーナー以外、その参加車両の重要性へ気付いた人は少なかったようだ。

クラシックカーが主役のレースイベントで、歴史的な結びつきの強いマシンが出場する機会は頻繁にはない。3台も揃って。象徴的なイベントの1つ、英国のグッドウッド・リバイバルですら。

第25回モンテカルロ・ヒストリック・ラリーへ出場したワークス仕様のサンビーム・タイガー
第25回モンテカルロ・ヒストリック・ラリーへ出場したワークス仕様のサンビーム・タイガー    画像提供:モンテカルロ・ヒストリック/レネ(Monte-Carlo Historique/Rene)

地中海に面したモナコへ集結したのは、レッドとダークブルーのワークス・タイガー。ADU 311BとADU 312B、AHP 294Bのナンバーで登録された、半世紀以上前のラリーマシンだ。当初作られた5台のうち、半数以上が元気な姿を保ってきたことも珍しい。

実際は、7台のタイガーがラリー用として作られた。2台はイタリア・シチリア島で開かれたタルガ・フローリオ仕様で、現在はアメリカ・コロラド州で余生を過ごしている。他方、モンテカルロ仕様の5台の内、1台は1970年代のクラッシュで失われている。

V8エンジンを積んだ英国製クーペに魅了

モンテカルロ・ヒストリックへ出場した3台は、グレートブリテン島で維持されてきたが、参戦直前にベルギーへ集まった。サンビームも属したルーツ・グループのクラシックにとって、新たな拠点と呼べる場所が、北西部のヴェルヴィクに存在するのだ。

そのMBモーターズは、英国製クラシック・スポーツカーを専門とするティム・モット氏が構えた場所。彼は20年以上のキャリアを持ち、優秀なメカニックも揃っている。

第25回モンテカルロ・ヒストリック・ラリーへ出場したワークス仕様のサンビーム・タイガー
第25回モンテカルロ・ヒストリック・ラリーへ出場したワークス仕様のサンビーム・タイガー    画像提供:モンテカルロ・ヒストリック/レネ(Monte-Carlo Historique/Rene)

以前からMBモーターズを頼ってきた1人が、ジャン・クロード・カストラン氏。ポルシェ911でモータースポーツに目覚め、2000年代初頭にベルギーで開かれたラリーイベントで、サンビーム・アルパインのV8エンジン版、タイガーに魅了されたという。

「父は速さに驚いていました。いつかこれを手にすると、誓っていましたね」。息子のマキシム・カストラン氏が振り返る。その時はグレートブリテン島南西部、エクセターで自動車販売店を営んでいた、ポール・キナストン氏がイベントへ挑んでいた。

1990年代まで実戦投入されたワークス・タイガー

カストラン親子がタイガーを購入したのは、2019年。ナンバーAHP 294Bのワークスマシンが、オークションに出品されたのだ。落札は流れたものの後日に契約へ至り、レストア済みのレッド&ホワイトの1台が、一家のクラシックコレクションへ加わった。

他方、カストラン親子の友人だったイェーガー親子もMBモーターズの顧客で、モンテカルロ・ヒストリック・ラリーへ丁度良いクルマを探していた。英国のACエースよりパワフルで、911より個性的なクラシックカーを。

第25回モンテカルロ・ヒストリック・ラリーへ出場したワークス仕様のサンビーム・タイガー
第25回モンテカルロ・ヒストリック・ラリーへ出場したワークス仕様のサンビーム・タイガー    画像提供:モンテカルロ・ヒストリック/レネ(Monte-Carlo Historique/Rene)

英国のレストア職人、デビッド・ブラゼル氏へ連絡すると、同じくツートーンのワークス・タイガー、ADU 312Bが提案されたらしい。3台の中では最も開発の進んでいた車両で、1990年代まで実戦投入されていた。

ブラゼルは、このタイガーを活かす時間がないと理解していた。そこで、ヘルト・ドゥ・イェーガーとセドリック・ドゥ・イェーガー親子へ譲ることを決めたという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジュリアン・バルメ

    Julian Balme

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

3台のサンビーム・タイガーの前後関係

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