ハイドロ彷彿の快適さ 誕生 DS No8(2) シングルの好バランスな走り 孤高の電動エグゼクティブ

公開 : 2025.07.07 19:10

サルーンの9を置換するNo8 ブランド本来の姿を体現? 航続は最長749km プレミアムな車内でも後席狭め シングルモーターの好バランスな走り ハイドロサス彷彿の快適性 UK編集部が試乗

シングルモーターの好バランスな走り

プレミアムサルーンのDS 9を置き換える、新しいDS No8。今回はフランス南東のジュラ山脈周辺で、280psのシングルモーターと、合計350psのツインモーターへ試乗させていただいた。駆動用バッテリーの容量は、いずれも97.2kWhだ。

前輪駆動のシングルモーター版でも、パワーは充分。走りのバランスが良く、より普段使いしやすいかもしれない。アクセルペダルの反応は予想しやすく、素早く滑らかに求めた速度を得られる。低速域での、ブルブルという細かな振動もない。

DS No8 エトワール・ハイレンジ(欧州仕様)
DS No8 エトワール・ハイレンジ(欧州仕様)

ツインモーター版はパワーが5割増しになり、明らかに積極的。ゆったり流すような走り方が似合う雰囲気のNo8だが、周囲の車両を蹴散らす急加速にも対応する。

ただし、シングルモーター版より航続距離は90kmほど短くなる。価格も上昇するが、それを補うだけの動的な魅力を有するわけではないだろう。このトレードオフは、他のバッテリーEVでも珍しくないことではあるが。

初代シトロエンDSのハイドロサスを彷彿?

試乗車には、アクティブスキャン・サスペンションが組まれていた。前方の路面状況をモニタリングし、アダプティブダンパーを予測的に制御し、快適性や操縦性を高めるというシステムだが、極めて効果的なようだ。

車重は2.2t前後と主張されるが、21インチ・ホイールを履いていても、驚くほどの精度で路面の凹凸を吸収。初代シトロエンDSのハイドロ・サスペンションに並ぶというのはいい過ぎかもしれないが、快適性は他の上級ブランドに劣らない。

DS No8 エトワール・ハイレンジ(欧州仕様)
DS No8 エトワール・ハイレンジ(欧州仕様)

舗装の滑らかな高速道路では、ボディは平滑に保たれ、穏やかな移動を実現。静寂性も高く、約130km/hで飛ばしても、ドアミラー周辺から僅かに風切り音が届くだけだ。

カーブが連続する峠道でも、安定性は高いまま。キツめのカーブではボディロールが小さくないものの、高すぎない全高と巧妙なシャシー設定のおかげで、不快なほどではない。プレミアムと呼ぶのに相応しい、快適性といえる。

ドイツのプレミアムブランドよりお手頃

それでも、運転を楽しめるとまではいえないだろう。回頭性はおっとり気味で、思い切りカーブへ飛び込んでみようという気にはなりにくい。ツインモーターのNo8で、スポーツ・モードを選んでも。

Xの形にスポークが伸びるステアリングホイールは、3時と9時の位置から手を持ち替えにくい。1920mmある全幅は、少し手に余りがち。耕作の季節で大きなトラクターと何度もすれ違ったが、幅寄せへ普段以上に気を使ってしまった。

DS No8 エトワール・ハイレンジ(欧州仕様)
DS No8 エトワール・ハイレンジ(欧州仕様)

価格は、英国ではシングルモーター版で5万790ポンド(約990万円)から。ツインモーター版では、6万3290ポンド(約1234万円)へ上昇する。高級感や航続距離を踏まえると、ドイツのプレミアムブランドよりお手頃といえるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    役職:副編集長
    AUTOCARの若手の副編集長で、大学卒業後、2018年にAUTOCARの一員となる。ウェブサイトの見出し作成や自動車メーカー経営陣へのインタビュー、新型車の試乗などと同様に、印刷所への入稿に頭を悩ませている。これまで運転した中で最高のクルマは、良心的な価格設定のダチア・ジョガー。ただ、今後の人生で1台しか乗れないとしたら、BMW M3ツーリングを選ぶ。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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