【昔の日本車を超える勢い?】BYDが欧州で過去最大規模の製品展開 ハンガリーの新工場を活用

公開 : 2025.06.30 06:45

中国の自動車メーカーであるBYDが、かつてない規模とスピード感で新車展開を計画しています。欧州におけるトップブランドの一角に加わることを目的としており、ハンガリーに設立した新工場がその拠点として稼働します。

まさに破竹の勢い

中国の自動車メーカーであり、5月には英国市場でプラグインハイブリッド車(PHEV)販売台数首位を獲得した『シールU』を擁するBYDが、かつてない規模での新車展開を計画している。

英国で開催された『ドルフィン・サーフ』の発表会において、欧州担当特別顧問であり、元フィアットクライスラー・オートモービルズのCOOやITAエアウェイズの会長を務めたこともあるアルフレド・アルタヴィラ氏は次のように語った。

『BYDドルフィン・サーフ』
『BYDドルフィン・サーフ』

「わたしは断言しますが、欧州でBYDが現在行っているような、これほど大規模な新車展開は過去に存在しなかったでしょう。我々は1年足らずで6車種を投入してきました。これにより、欧州の主要セグメントをすべてカバーしています。今回のドルフィン・サーフは、A・Bセグメントにおける “最後のピース” だったのです」

世界最大のEVメーカーであるBYDは、主力ブランドのほか、欧州市場ではまだ知名度が低いサブブランドも展開予定である。メルセデス・ベンツなどのプレミアムブランドをターゲットとする『デンツァ(騰勢)』や、フラッグシップを担う『ヤンワン(仰望)』などがそれにあたる。BYDグループにおける新技術はまずこれらのブランドに搭載され、その後にBYD本体へと波及する構図である。

さらに、アルタビラ氏は続けてこう述べた。

「夏季休暇明けには、重要な新型車を再び発表する予定で、年末までにさらに複数のモデルが続きます。これは、 “絶えず技術が進化し続けるブランド” というBYDのイメージを築く取り組みであり、短期間で複数の新型車を展開できる理由でもあります」

今回英国で発表されたドルフィン・サーフは、中国生産の車両であるが、年内には欧州拠点となるハンガリーの新工場での現地生産が開始される予定である。この工場は単なる生産拠点にとどまらず、欧州市場向けに設計・開発も現地化することを目指している。

今回のドルフィン・サーフは、中国および南米市場での発売から約1年半遅れて欧州に導入された。これは、欧州市場の嗜好に合わせた再設計(リエンジニアリング)を経た結果なのだ。

アルタビラ氏はさらに続ける。

「2026年に向けて、BYDのラインナップはさらに地域に根ざした構成となっていきます。これは、他のアジアメーカーに対する大きなアドバンテージです。欧州で本格的に存在感を示すためには、専用の製品ラインナップが不可欠です。我々はそれを実現させます」

現在BYDは、英国市場で約2%のシェアを獲得しており、将来的には欧州トップクラスの自動車メーカーの仲間入りを目標としている。

「我々は、技術力に加えて、主要車種の現地生産という体制を手にしました。欧州におけるトップブランドの一角に加わるための条件を整えています」

「ナンバーワンであろうとなかろうと、ビッグ3であろうとビッグ5であろうと重要ではありません。BYDは必ず、欧州の主要プレイヤーの1つとなることでしょう」

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    小河昭太

    Shota Ogo

    2002年横浜生まれ。都内の文系大学に通う現役大学生。幼いころから筋金入りのクルマ好きで、初の愛車は自らレストアしたアウトビアンキA112アバルトとアルファロメオ2000GTV。廃部になった自動車部を復活させようと絶賛奮闘中。自動車ライターを志していたところAUTOCAR編集部との出会いがあり、現在に至る。instagram:@h_r_boy_
  • 編集

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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