【狙いはポルシェ】中国発プレミアムブランド『デンツァ(騰勢)』 4人乗りグランドツアラー欧州発売へ

公開 : 2025.04.14 06:45

中国の自動車メーカーBYDのプレミアムブランドであるデンツァ(騰勢)は、ポルシェをターゲットに据えたグランドツアラー『Z9 GT』と、7人乗りの高級ミニバン『D9』のラインナップを欧州に導入します。

高級版BYD、ついに欧州上陸

中国のEV大手、BYDは今年、プレミアムブランドであるデンツァ(騰勢)を欧州に導入する。ラインナップの筆頭となるのは最高出力965psのEV『Z9 GT』だ。

まず、フラッグシップのグランドツアラーとしてZ9 GTを発売し、その後、『D9』と呼ばれる7人乗りのミニバンを追加する予定だ。BYDの副社長ステラ・リー氏は以前、デンツァについて、ポルシェなどの欧州プレミアムブランドをターゲットにしていると語っていた。

デンツァZ9 GT
デンツァZ9 GT    デンツァ

デンツァは「テクノロジーがエレガンスを牽引する」というフレーズを掲げ、ミラノ・デザイン・ウィークで欧州デビューを飾った。BYDの幹部は「エレガントなヨーロピアン・デザインの影響」と最先端技術を特徴とするラインナップ展開を約束。リー氏は、「このセグメントで初めて、効率的で持続可能な新エネルギー・パワートレインに真の焦点を当てた」製品を提供すると述べた。

具体的なスケジュールは未定だが、デンツァはBYDとは別のマーケティング活動とディーラー網を構築しながら、英国には今年末か2026年初頭に進出する予定だ。

リー氏によると、デンツァは最終的に欧州で4~6車種のラインナップを展開し、その中にはSUVやオフローダーも含めるという。中国では現在、Z9 GTとD9のほか、SUVのN7とN9を販売している。

欧州のプレミアムブランドの顧客はブランド志向が強いとされるが、リー氏は、この市場への参入はそれほど難しいことではないと考えているそうだ。

「BYDのクルマの販売はシンプルです。競合車すべてをテストコースに持ち込んで、顧客に選んでもらうだけです」

「デンツァのクルマは競合他社よりも10倍優れています。レガシーブランドにはないユニークな特徴がたくさんあります」

さらにリー氏は、「BYDにはテクノロジーだけでなくデザインもある」と付け加え、アウディの元デザイナーであるヴォルフガング・エッガー氏が手掛けるスタイリングも重要なセールスポイントになるだろうと主張した。

欧州進出をリードするZ9 GT

4人乗りのZ9 GTは、デンツァ専用に開発された『e3』と呼ばれる先進プラットフォームをベースとし、ポルシェ・タイカンパナメーラへの対抗馬となる。超急速充電を可能にする800Vの電気アーキテクチャー、バッテリーとボディを一体化して剛性を高めるCTB(セル・トゥ・ボディ)構造、3基の電気モーターからなるドライブトレインが特徴だ。

シューティングブレークのスタイリングはヴォルフガング・エッガー氏によるもので、全長5180mm、全幅1990mmでありながら、全高は1500mmに抑えられている。エアサスペンションが標準装備され、フロントはダブルウィッシュボーン、リアはマルチリンク式のサスペンションを採用する。

Z9 GTのスタイリングはヴォルフガング・エッガー氏によるもの。
Z9 GTのスタイリングはヴォルフガング・エッガー氏によるもの。    デンツァ

デンツァの欧州仕様について詳細はまだ判明していないが、中国本国向けのバージョンでは、フロントアクスルに最高出力312psのモーターを、リアには最大2万1000rpmで作動する326psのモーターを2基搭載。合計システム出力は965psとなり、0-100km/h加速3.4秒を誇る。BYD製の100kWhの『ブレードバッテリー』を搭載し、中国のテストサイクルでの航続距離は最大630kmとされる。

『スーパーDM』と名付けられたPHEVバージョンは、専用設計の271psの2.0Lターボガソリンエンジンをフロントに、300psの電気モーターをリアアクスルに搭載。システム出力は870psで、0-100km/h加速は3.6秒となる。

駆動用バッテリーは38.5kWhで、EVバージョンと同様にCTB構造を採用している。公称航続距離は電気のみで200km、エンジンと合わせた総航続距離は1100kmとされる。デンツァによると、エンジン単体でも18km/lの燃費を達成できるという。

デンツァは、今秋の欧州市場への投入を前にZ9 GTのアップグレードに取り組んでおり、パワートレイン、性能、航続距離、タイヤサイズ、収納スペースなどを改良するとしている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    小河昭太

    Shota Ogo

    2002年横浜生まれ。都内の文系大学に通う現役大学生。幼いころから筋金入りのクルマ好きで、初の愛車は自らレストアしたアウトビアンキA112アバルトとアルファロメオ2000GTV。廃部になった自動車部を復活させようと絶賛奮闘中。自動車ライターを志していたところAUTOCAR編集部との出会いがあり、現在に至る。instagram:@h_r_boy_
  • 編集

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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