シャープな加速にソフトな乗り心地 BYDシーライオン7 529psの四駆 モデルYは超えず?

公開 : 2025.12.01 18:05

312psの後輪駆動か529psの四輪駆動を選べるシーライオン7 落ち着いた内装デザイン 滑らかで鋭い加速 緩い姿勢制御と操縦性 実用性はクラス平均 静寂性は悪くない UK編集部が試乗

312psの後輪駆動か529psの四輪駆動

2024年に472万台ものバッテリーEVを販売した、中国のBYD。今回試乗したシーライオン7は、4ドアサルーン、シールのクロスオーバー版といえる。スタイリングの主張は若干弱いが、英国では同社4台目の量産モデル。日本でも販売が始まった。

英国仕様のパワートレインは3種類。スタンダードレンジの駆動用バッテリーは82.5kWhで、312psを発揮するシングルモーターの後輪駆動がベーシックな仕様。218psのモーターを前側に追加した、529psの四輪駆動も選べる。

BYDシーライオン7 エクセレンス(英国仕様)
BYDシーライオン7 エクセレンス(英国仕様)

航続距離は482kmと453kmが主張され、急速充電は150kWまで対応。また、駆動用バッテリーが91.3kWhの四輪駆動も用意され、航続距離は502kmへ長くなる。こちらの急速充電は、最大230kWへ速くなる。

補機用の電圧12V電源は、未だに鉛バッテリーを用いるメーカーも多いが、BYDはLFPバッテリーを採用。8年保証で、バッテリーあがりの心配は長期間ないという。

落ち着いた内装のデザイン 平均的な実用性

BYDのインテリアは、奇抜なデザインで驚くこともあったが、シーライオン7では熟成された印象。落ち着いた造形や配色になっている。そのかわり、ボディと同様に印象へ残らないデザインともいえる。運転席の視点は、やや高めだ。

シートは、環境に優しく風合いの良い合皮が標準。トップグレードのエクセレンスでは、本皮へアップグレードされる。ドアやダッシュボードなどはソフトタッチ加工され、樹脂製なことは隠さないが、テスラモデルYより高級感があるように思う。

BYDシーライオン7 エクセレンス(英国仕様)
BYDシーライオン7 エクセレンス(英国仕様)

車内で存在感を示すのは、縦横に向きが変わるタッチモニター。表示は美しく、エアコン用のショートカットなどが常時表示されるが、無駄なブランクもある。アップル・カープレイの統合は自然だが、翻訳が不自然など、気になる部分もゼロではない。

後席側の空間は、前後方向に広いもののフロアが高い。荷室容量は、ヒョンデアイオニック5と同等。フロント側にも、58Lの収納もある。実用性はクラスの平均といえる。

滑らかで鋭い加速 要改良な運転支援

ドライブモードは複数から選べ、回生ブレーキは2段階に切り替えられるが、どれも明らかな変化はない。シフトセレクターでDを選び、右足を傾ければ、活発に発進してくれる。ベーシックな312ps仕様でも、0-100km/h加速は6.7秒で処理する。

試乗車は529psの四輪駆動で、0-100km/h加速は4.5秒。車重は2.5t近くあるが、非常に速い。アクセルペダルの反応には僅かなラグがあり、ブレーキペダルの踏みごたえはソフトすぎるが、パワーデリバリーは滑らかで運転しやすい。制動力も調整しやすい。

BYDシーライオン7 エクセレンス(英国仕様)
BYDシーライオン7 エクセレンス(英国仕様)

運転支援システムは、改良を求めたい部分。制限速度警告は、音楽のボリュームを下げてまで警報を鳴らしてくる。車線維持支援の介入は、少し厄介なほど過剰。ドアミラーを見ると、ドライバー監視機能が警告してくる。他にも、気になる点が複数ある。

電費は、試乗車のカタログ値で4.5km/kWhが主張される。後輪駆動の312ps版でも、4.9km/kWhと振るわない。

記事に関わった人々

  • イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • ジャック・ウォリック

    Jack Warrick

    役職:常勤ライター
    クルマだけでなく、英国のローカルニュースとスポーツ報道にも精通し、これまで出版物、ラジオ、テレビなど、さまざまなコンテンツ制作に携わってきた。フォルクスワーゲン・グループの小売業者向けニュースウェブサイトの編集者を務めた後、2021年にAUTOCARに移籍。現在はその幅広い経験と知識を活かし、主にニュース執筆やSNSの運営を担当している。これまで運転した中で最高のクルマは、トヨタGRヤリス。一番のお気に入りだ。
  • 中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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