【大型免許、取得しました】第2章:意外な経験が生きた! 自動車ジャーナリスト(修行中)黒木美珠の挑戦
公開 : 2025.07.02 11:45
意外な障壁。最初に苦しんだのは、加速ではなく減速
ハンドル操作やクラッチ操作は、思っていた以上に早く慣れることができた、という手応えがありました。一方で、慣れるまで最も時間を要したのが、ブレーキ操作です。
特に教習を始めて4時限ほどは、いわゆる『カックンブレーキ』の連続。停止するたびに助手席の教官が前後に揺さぶられているのが、視界の端に入ってきました。

原因は、大型車特有のエアブレーキ。
空気の圧縮を利用して制動力を生み出すこの方式は、一般的な油圧式よりも強い効き方をするため、わずかに踏み込むだけでもしっかりと減速します。繊細な踏力が求められることに気がつき、教習3日目からは靴底の薄いドライビングシューズに履き替えました。するとペダルの感覚が足に伝わりやすくなり、操作性が格段に向上したのです。
想像以上に扱いやすい部分と、思わぬところに潜んでいた難しさ――そのどちらもが混在する大型車の運転を、教習の初期段階から体感しました。
教習中はほかにも、普通車とは異なる仕様や設計に驚かされました。
たとえば、ハザードランプの位置。普通車ではインパネに配置されたスイッチが一般的ですが、大型車では左側のワイパーレバーを上に引き上げると作動する仕組みになっています。これは、ハンドルから手を離さずに操作できるよう、実務に即した設計だそうです。
それから、同じ左レバーを下に動かすと作動するのが『排気ブレーキ』。これは、ディーゼルエンジンを搭載した大型車両に備えられている補助ブレーキの一種で、アクセルを離した際に排気ガスの流れを制限し、エンジンブレーキの効果を高めて車両の減速をサポートするというものです。
ただし、教習ではこの装備は使用せず、あくまでフットブレーキのみで減速・停止する練習を重ねるように指導されました。教官からは、「排気ブレーキに頼らずに安全に停止できるようになれば、それだけ車両を正確に制御できている証でもある」という説明を受けました。
意外な経験が活きた、前輪位置の『違い』への感覚
教習が進む中で、嬉しいことがありました。これまで自走による日本一周体験や取材の場で、トヨタ・ハイエースや日産キャラバンといった、運転席よりも後ろもしくは運転席の下に前輪が付いているワンボックス車両を運転していた、その経験が活かされたのです。
普通車は運転席よりも前に前輪が付いている普通車に比べ、運転席より後ろに前輪があるハイエースなどでは、右左折の際、ハンドルを切るタイミング遅くなります。大型車両も前輪が運転席の下もしくはそれよりも後方に位置しているため、サイズ感こそ全く異なるものの、身体に馴染んだ『タイヤ位置によって切り始めを遅くする』感覚でスムーズに曲がりきることができました。

教官によると、多くの方が大型教習で苦戦するのは『MT操作』と『カーブ』なのだとか。AT免許の方はまずシフト操作の基本から覚えなくてはなりませんし、後者は普通車の感覚でハンドルを切ってしまって曲がり切れない、ということがしばしば起こるのだそうです。人によっては時間内に教習内容が終わらず、補講が必要になる場合もあるという中で、教官からお褒めの言葉をいただけました。これは、MT車を日常的に運転していた経験と、ワンボックスを使って数百キロ運転してきたことが役に立ったということ。嬉しく、誇らしく、そして、経験というのは机上の知識以上に大きな意味を持つのだと実感しました。
――次回は、免許取得によるメンタル面の変化と、大型車へのリスペクトが生まれた話をお届けします。

