シトロエンを120台所有する男 マニア必見のコレクション(前編) 巨大な個人博物館

公開 : 2025.07.26 18:25

フランスの熱心な自動車コレクターが作り上げた、シトロエン専門の博物館を紹介します。保管されている120台はすべて個人所有で、その1台1台にさまざまな「物語」が詰まっています。ダブルシェブロン愛好家必見です。

熱心な愛好家が作り上げた「ミュゼ」

フランスの首都パリにあるシトロエン・コンセルヴァトワールは、シトロエンが所有する自動車博物館だ。しかし、この博物館には強力な「ライバル」がいる。

熱心な自動車収集家、アンリ・フラデ氏は、40年かけて戦後のシトロエンモデルを丹念に集め、その数120台以上という驚異的なコレクションを築き上げた。これらの車両は、フランス南部の小さな町カステラーヌにある『シトロミュージアム(CitroMuseum)』という個人博物館に収められている。

フランスの個人博物館『シトロミュージアム』に並ぶ魅力的な展示車両を一部抜粋して紹介する。
フランスの個人博物館『シトロミュージアム』に並ぶ魅力的な展示車両を一部抜粋して紹介する。

フラデ氏は、走行距離が少なく、レストアされていない個体を好み、理想のシトロエンを探し求めて欧州各地を旅してきた。今回は彼の貴重な収集品の中から、特に興味深いものをいくつかご紹介したい。風光明媚なフランスアルプスを背景に、タイムトラベルのような体験を楽しもう。

3つの展示フロア

博物館は大きく3つのセクションに分かれている。1つ目は、トラクシオン・アバンとDS/IDのシリーズを紹介している。2つ目は、2CVとその数多くの派生車種に焦点を当てている。そして3つ目のセクションは、1970年代から1990年代にかけて製造された比較的新しいクルマが展示されている。

フラデ氏は、集めたクルマを倉庫に保管するだけでは満足しなかった。各セクションには、シトロエンの研究開発部門が保管していたオリジナル文書、モデルカー、ヴィンテージのディーラー看板など、シトロエンにまつわる貴重な資料が数多く収められている。

テーマごとに3つの展示フロアに分かれている。順に紹介しよう。
テーマごとに3つの展示フロアに分かれている。順に紹介しよう。

トラクシオン15/6(1952年)

シトロエンは1934年にトラクシオン・アバンを発売したため、戦後のモデルとして分類されるわけではないが、1957年まで長期にわたって生産されていることから、この博物館にも所蔵されている。

写真の1952年製の車両は、2.9L直列6気筒エンジン(最高出力78ps)を搭載し、これまでに約4万kmを走行している。1973年にあるコレクターが最初のオーナーから購入し、常時屋内で保管していた。フラデ氏のシトロミュージアムに加わったのは2016年のことだ。

トラクシオン15/6(1952年)
トラクシオン15/6(1952年)

DS(1955年)

シトロミュージアムにはDS/IDが数台展示されているが、この1955年製のブラックの個体は、間違いなく歴史的に重要な1台だ。シャシー番号は「32」で、生産開始後14台目に販売された個体であり、現存する最古の量産車だ。最初の13台は、コレクターの注目を集めるよりもずっと前に、おそらく廃車になっていたと思われる。

シトロエンは1956年2月までDSの量産を開始していなかったため、1955年に登録された175台は、すべて手作業で組み立てられた。この32号車は、フランスのヴァランスにあるシトロエン販売店に納車され、デモカーとして使用された。本来はシトロエンの本社に返却されるはずだったが、顧客の1人に売却された。その後、数人のオーナーを経て、オランダの博物館で13年間保管された後、2004年にシトロミュージアムに加わった。走行距離は約6万9000km。

DS(1955年)
DS(1955年)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ロナン・グロン

    Ronan Glon

  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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