【ベンチマーク復権!】8.5代目フォルクスワーゲン・ゴルフ『GTI』は、8代目とどう変わったか

公開 : 2025.03.13 11:45  更新 : 2025.03.21 22:00

8代目フォルクスワーゲン・ゴルフがマイナーチェンジを受け、通称『8.5』へと進化しました。もちろん伝統的ホットハッチ、『GTI』も健在です。果たしてその進化の幅は? 大谷達也がレポートします。

従来のゴルフの水準に達していないと感じた8代目

新しい価値を追求するあまり、伝統的な価値が部分的に損なわれてしまった。

2019年にデビューした8代目フォルクスワーゲン・ゴルフのことを、私はそんな風に評価していた。

8.5世代へマイナーチェンジしたフォルクスワーゲン・ゴルフ、そのホットハッチ版『GTI』。
8.5世代へマイナーチェンジしたフォルクスワーゲン・ゴルフ、そのホットハッチ版『GTI』。    山本佳吾

多くの人々と同じように、ゴルフこそファミリーカーのベンチマークであると私は信じてきた。いや、そのどっしりとして安定感の優れた乗り心地や、どれほど激しい入力が足まわりに加わってもビクともしない頑丈さなどは、どんな高級車と比べても引けを取らないくらい優れていていたものだ。けれども、そうしたゴルフの伝統的な美点が損なわれてしまったと、8代目に初めて触れたときに感じた。

秀でたプロポーションのエクステリアデザインや優れたスペースユーティリティという点では、ゴルフの名にまったく恥じない。マイルドハイブリッドを積極的に採用し、デジタル化にも臆することなく挑戦したその姿勢にも共感を覚える。けれども、足まわりの仕上がりに関しては、従来のゴルフの水準には達していないように思えたのだ。

とりわけ不満だったのが、路面から強い入力が加わったとき、足まわりに『ブルブルブルッ』という微振動が起きること。これは『ホイールコントロール』と呼ばれる現象であることを後に知ったのだが、頑丈極まりなかったゴルフ7とのあまりの違いに、私が必要以上に大きなショックを受けたことは否めなかった。

「え、こんなにバネレートを落したの?」

そんなわけで、ゴルフ8のマイナーチェンジ版である通称『ゴルフ8.5』の標準グレードを初めてドイツで試乗したときにも、ホイールコントロールのことが真っ先に気になったが、嬉しいことに、一般道を走っている範囲では微振動をほぼ感じないレベルまで改善されていることが判明。それからほぼ半年を経て、日本の道でゴルフGTIに試乗する機会を得たのである。

乗り始めてすぐに感じたのは、「え、こんなにバネレートを落したの?」ということだった。私のなかで明確に記憶に残っている最初のゴルフGTIは2005年にデビューした5代目だが、この頃にはすでに200psに達したパワーを受けとめるため、サスペンションはそれなりに固められていて、日常的に乗るにはそれなりの覚悟が必要だった。

8.5世代では、乗り味がはっきりと快適方向に振られている。
8.5世代では、乗り味がはっきりと快適方向に振られている。    山本佳吾

そうした傾向はゴルフ8のGTIでいくぶん緩和されたが、8.5では、はっきりと快適方向に振られていたのだ。

『バネレートを落した』というのはあくまでも私の主観で、実際に数値を確認したわけではないものの、路面に滑らかに追随してサスペンションがストロークする様子からは、低いバネレート特有の豊かなストローク感が伝わってきた。

もっとも、ここまで足まわりがソフトだと、スポーツドライビングを楽しもうとしたときに頼りなく感じられるのではないかと心配したが、電子制御式可変ダンパーシステムであるDCCでスポーツモードを選ぶと、減衰力だけでなくスプリングまで引き締められたのではないかと思うくらいボディの無駄な動きが抑えられ、ステアリング操作に対してより俊敏な反応を示すようになったのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。
  • 撮影

    山本佳吾

    Keigo Yamamoto

    1975年大阪生まれ。阪神タイガースと鉄道とラリーが大好物。ちょっとだけ長い大学生活を経てフリーターに。日本初開催のWRC観戦をきっかけにカメラマンとなる。ここ数年はERCや欧州の国内選手権にまで手を出してしまい収拾がつかない模様。ラリー取材ついでの海外乗り鉄旅がもっぱらの楽しみ。格安航空券を見つけることが得意だが飛行機は苦手。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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