本当だった007へ登場した噂 マーキュリー・クーガー XR-7(2) アストンとのシーンを再現したい

公開 : 2025.08.09 17:50

ボンドガールが飛ばしたマーキュリー・クーガー XR-7 エンジンは最強仕様の428コブラジェットV8 本当だった映画へ登場した噂 「女王陛下の007」仕様へ復元された1台をUK編集部がご紹介

すし詰め状態のクラシックカーに紛れていた

0-400mダッシュを16秒台でこなしたマーキュリー・クーガー XR-7を、前オーナーから購入したのは、友人のサイモン・ネルソン氏。「その頃、アメリカ車の人気は低く、比較的安く流通していました。007へ登場したといっても、価値は同じでしたね」

1500ポンドで我が物にしたネルソンは、地元のレーシングチームに所属し、カーショーへも参加した。しかし、クルマは劣化が進んでいたという。「ソフトトップの樹脂製リアウインドウは割れていて、ボディも錆びていました」

マーキュリー・クーガー XR-7 コンバーチブル(1969~1970年/欧州仕様)
マーキュリー・クーガー XR-7 コンバーチブル(1969~1970年/欧州仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

そんなクーガーの状態を見て、前妻は相談もなく1988年7月に売却してしまう。購入したのは、100台以上のコレクションを有した、カーマニアのクリフ・バロン氏。ところが、その記憶は殆どないらしい。「クルマが多すぎて、保管場所が足りませんでした」

アメ車マニアのロバート・ハードル氏が、クーガーの情報を耳にしたのは1990年。「友人が、1969年式コンバーチブルの売却広告を見つけてくれたんです。ガレージを訪れると、すし詰め状態のクラシックカーに紛れて止まっていました」

本当だった007へ登場したという噂

「詳しく確認すると、エンジンブロックは390でした。ヘッドとインテークマニホールドは、428用なのに。それでも珍しい事はわかっていたので、購入を決めました」。希望額は2500ポンドだったというが、1500ポンドで契約は成立した。

「手に入れてから、007へ登場したという噂が、本当だと判明しました。レストアを進めるべきだと、決めたんです」。ハードルが振り返る。

マーキュリー・クーガー XR-7 コンバーチブル(1969~1970年/欧州仕様)
マーキュリー・クーガー XR-7 コンバーチブル(1969~1970年/欧州仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

アメリカ・クーガー・クラブへ入会した彼は、フォードの元社員、ロイス・エミンガー氏の連絡先を教えてもらった。1960年代に、彼女は保証が切れた車両に対する顧客対応を任されていたが、当時のフォードは10年を目安にすべての記録を廃棄していた。

しかし、エミンガーは請求書などを保管する必要性を進言。引退後も、許可を得て自宅に保管していた。「彼女へ25ドルを送金すれば、倉庫を探して書類を送ってくれました。その中に、ボンド映画と書かれた請求書も含まれていたんです」

オークションでクーガー史上最高額を更新

レストアを仕上げるため、ハードルは合計7回も渡米。スーツケースへ入る限りの部品を、グレートブリテン島へ持ち帰った。30年近くをかけ、「女王陛下の007」の姿へ復元されたクーガーには、本物のスキーラックとスキー板も積まれた。

「新車の時より、状態は良くなっていたと思います」。とハードルが笑う。赤いフランスの仮ナンバーまで、再現したそうだ。

マーキュリー・クーガー XR-7 コンバーチブル(1969~1970年/欧州仕様)
マーキュリー・クーガー XR-7 コンバーチブル(1969~1970年/欧州仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

しかしCOVID-19の流行で、すぐのお披露目は叶わなかった。車両価値が影響し、任意保険の金額が高く、自ら維持することの難しさにも悩んでいた。「ボナムズ・オークションへ相談すると、売却へ前向きに応じてくれました」

2020年12月にオークションへ出品。落札額は、31万ポンドへ高騰したという。「あのクーガーには、多くの時間と労力を費やしています。クーガー史上の最高額を更新できて、うれしいですよ」

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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