フェラーリ12チリンドリ x アストン マーティン・ヴァンキッシュ(1) 過去イチに競合関係のV12 GT

公開 : 2025.07.11 19:05

両ブランドのライバル関係を顕在化させる、12チリンドリとヴァンキッシュ 最新世代の違いとは? 運転体験へ影響を与える敏捷性 V12エンジン・グランドツアラーの真髄へUK編集部が迫る

フェラーリへの期待度を表す風当たりの強さ

フェラーリ12チリンドリは、期待度を表すように風当たりも強い。「V12エンジンだけでは刺激不足」「ポンティアック・アズテックのような後ろ姿」といった意見も、SNSでは散見される。

確かに、モデル名は少し難解かもしれない。スタイリングには癖がある。ティーポ140ユニットの響きは、排気ガスを浄化する微粒子フィルターで、従来より耳に優しい。

イエローのフェラーリ12チリンドリと、ガンメタリックのアストン マーティン・ヴァンキッシュ
イエローのフェラーリ12チリンドリと、ガンメタリックのアストン マーティンヴァンキッシュ    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

1996年に発売されたフェラーリ550 マラネロも、初めから賛辞を集めたわけではなかった。この時代に適応しなければ、フェラーリだとしても生き残りは難しい。少なくとも、12チリンドリのサウンドは感動を誘う。運転体験にこそ、真髄はあるといえる。

今回やって来たのは、グレートブリテン島北部のスコットランド。そこには、新しいアストン マーティン・ヴァンキッシュが待っていた。AUTOCARでは既に試乗済みで、素晴らしさは理解している。息を呑むほど美しく、鮮烈なオーバーステアへ興じれる。

従来以上に両ブランドのライバル関係は強化

これまでのアストン マーティンDBSは、同時期のフェラーリ812スーパーファストにパワーで劣った。英国ゲイドンの技術者は、それを見逃さなかった。12チリンドリも従来から5ps強化され830psを得たが、新型ヴァンキッシュは835psを誇示する。

最大トルクの差は大きい。自然吸気の6.5L V12エンジンは69.0kg-mを発揮するが、ツインターボの5.2L V12エンジンは桁違いの101.8kg-mを繰り出し、サウンドも勇ましい。価格は、英国では横並びといえる。

イエローのフェラーリ12チリンドリと、ガンメタリックのアストン マーティン・ヴァンキッシュ
イエローのフェラーリ12チリンドリと、ガンメタリックのアストン マーティン・ヴァンキッシュ    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

最新世代の2台は、これまで以上にフェラーリとアストン マーティンのライバル関係も強める。接近戦は、サーキットだけでなくショールームでも展開中。グランドツアラーだけでなくカブリオレ、スーパーSUVでも、選択肢がそれぞれ用意されている。

どちらも、ル・マン・マシンの公道版も擁する。1154psのフェラーリF80と、1.1tのダウンフォースを誇るアストン マーティン・ヴァルキリーだ。先月のル・マン24時間レースでは、F80の耐久仕様といえる499Pが勝利を収めたが。

マイルドに変化した12チリンドリ

深掘りするなら、エイドリアン・ホールマーク氏が後を継ぐまで、アストン マーティンのCEOはアメデオ・フェリーサ氏だった。彼は、それ以前にはフェラーリのCEOに就いていた。両ブランドの比較は、過去にないほど面白みを増している。

話題を戻そう。現在の両社で最も意味深い乗り比べこそ、今回の2台だろう。互いにV12エンジンをフロントに積んだ、トラッドなモデルといえる。どちらが勝つのかは、さほど重要ではない。2台とも、圧倒的な充足感で報いてくれるから。

フェラーリ12チリンドリを運転する筆者、リチャード・レーン
フェラーリ12チリンドリを運転する筆者、リチャード・レーン    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ロンドンからの道中で、12チリンドリは812スーパーファストからマイルドに変化したことを実感した。これは歓迎できる。先代は、常に積極性が求められるフェラーリだった。好ましいスーパーカーでも、思慮深いグランドツアラーとはいいにくかった。

同時に、レッドラインは600rpm増しの9500rpmへ上昇。2万km毎の点検が指定されるユニットとして、異例なほど高回転型といえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フェラーリ12チリンドリ x アストン マーティン・ヴァンキッシュの前後関係

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