F1を守るアストン マーティン ヴァンテージとDBX707 「裏方」敏腕ドライバーへ聞く

公開 : 2025.08.01 19:05

運転技術だけでなく状況判断力も試される

メディカルカーのドライバーは、カール・ラインドラー氏。彼も、プロのレーシングドライバーだった人物だ。「速く運転するだけでなく、冷静さを保ち、優れた状況判断も試されます。F1マシンは、DBX707の倍の速さで走れますから」

「2024年のアゼルバイジャンGPで開かれた、F2サポートレースでは、3台が絡む事故がありました。誰の救援を優先するか、自分たちは即座の決断が必要でした」

アストン マーティンDBX707 メディカルカーのドライバー、カール・ラインドラー氏
アストン マーティンDBX707 メディカルカーのドライバー、カール・ラインドラー氏

「1台はドライバーが脱出を試みていましたが、1台は炎上し、もう1台は横転。消防隊も到着し、自分たちは横転したマシンへ向かいました。ドライバーは無事でしたよ」

ラインドラーは、DBX707のメディカルカーでストウ・サーキットを全開で飛ばしてくれた。足取りは安定し、コーナーでは僅かにアンダーステア。筆者も少し運転させてもらったが、その頼もしさが強く響いた。レースの見方も、少し変わりそうだ。

番外編:F1のセーフティーカー&メディカルカー

F1へセーフティーカーが導入されたのは、1973年のカナダGPから。車両はポルシェ914だった。1978年のイタリアGPでの死亡事故をきっかけに、メディカルカーの導入が検討され、同年のアメリカGPから加わっている。

1981年のモナコGPでは、ランボルギーニカウンタックがセーフティーカーを担当。1995年のハンガリーGPでは、エンジントラブルでマシンから降りた井上隆智穂氏が、メディカルカーと接触。足を負傷してしまう。

アストン マーティンDBX707(FIAメディカルカー仕様)
アストン マーティンDBX707(FIAメディカルカー仕様)

1996年に、メルセデス・ベンツ C 36 AMGのセーフティーカーが導入。2020年のバーレーンGPでは、ロマン・グロージャン氏がクラッシュし、マシンは炎上。メディカルカー・クルーの処置を受けている。

メルセデスAMGとの共同で、アストン マーティンも2021年から参画。現在は2023年式DBX707と2024年式ヴァンテージが、レースの安全を守っている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    役職:特派員
    フリーランスのジャーナリストで、AUTOCAR英国編集部の元スタッフ。姉妹誌『What Car?』誌の副編集長や『Practical Caravan誌』の編集長なども歴任した。元自動車ディーラーの営業マンという経験を活かし、新車・中古車市場や消費者問題について幅広く取り扱っている。近年は、これらのニュースや特集記事に加え、アイスクリーム・ワゴンのDIY方法から放置車両の探索まで、さまざまな記事を寄稿している。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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