「ヴァルハラ」由来ターボで増強 アストン マーティン DBX S(1) 727psのハードとは?

公開 : 2025.10.20 19:05

ヴァルハラ由来のターボで727psを得たS 軽量化オプションで2198kg 0-100km/h怒涛の3.3秒 小さくないターボラグ シャシーバランスは完璧 一層シリアスな新しい選択肢 UK編集部が試乗

ヴァルハラ由来のターボで727ps

「レス・イズ・モア」の美徳は、広い共感を得るはず。過剰な馬力は、公道で必要ない。それでも実際のクルマ選びでは、「モア・イズ・モア」の気持ちが優先されるようだ。

上級ブランドで、その傾向は強い様子。アストン マーティンはSUVのDBXへ707を追加した際、従来の558ps版との併売を考えていた。ところが、大多数のユーザーは707psの方を選んだ。結果として、ラインナップには強力な方だけが残った。

アストン マーティン DBX S(欧州仕様)
アストン マーティン DBX S(欧州仕様)

多くの人が求めるモノを提供することは、当然の流れ。アストン マーティンがDBX707をベースに、更に高性能な仕様、DBX Sを投入したとしても不思議ではない。

DBX707が搭載する、メルセデスAMG由来の4.0L V8ツインターボエンジンは、既にクラス屈指の出力を誇っていた。その2基のターボを、アストン マーティン・ヴァルハラ由来の大径ツインスクロールへ置換し、727psの生成に成功している。

軽量化オプションで2198kgに シャシーも調整

DBX Sの0-100km/h加速は3.3秒で、707と差はない。しかし、2245kgの車重を2198kgまで削れる軽量化オプションを組むことで、僅かに短縮は可能だという。

例えば、23インチのマグネシウムホイールは、1本当たり5kg軽い。パノラミック・サンルーフが標準だが、開放感を諦めてカーボンファイバー製のルーフパネルへ交換すれば、18kg削れるそうだ。それでも、約2.2tはあるのだが。

アストン マーティン DBX S(欧州仕様)
アストン マーティン DBX S(欧州仕様)

ステアリングは、レシオを4%ショート化。切れ角も増し、最小回転直径は12.0mへ縮めている。同社の技術者は、車重増を招き直感的な操縦性へ影響を与える後輪操舵システムは、不要だとしている。

操舵時の一体感を増すべく、エアスプリングとアダプティブダンパーは再調整。旋回時のボディロールを効果的に抑え、敏捷性や安定性を引き上げる電子制御アンチロール・システムも、改良を受けている。

当面のハイブリッド化はナシ?

ちなみに、ターボラグを踏まえると、ポルシェカイエンランボルギーニウルスのように、ハイブリッド化されても良いように思える。メルセデスAMGも、ハイブリッド技術には積極的だ。

しかし、技術者の説明から察するに、近々の導入は考えていないらしい。V8ツインターボエンジンは、電動化なしでもユーロ7基準の排気ガス規制へ対応でき、CO2の排出量削減は、事業上でのコストと割り切れるためだろう。

アストン マーティン DBX S(欧州仕様)
アストン マーティン DBX S(欧州仕様)

そもそも、押出成形のアルミニウムを接着したプラットフォームは、複雑なパワートレインを想定していない。充電する手間は増えても、電動化で乗りやすさが大幅に向上するわけでもない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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