まるで独自開発サルーン マツダ6e(1) 航続は479kmか552km パートナー譲りのハードに迫る

公開 : 2025.08.06 19:05

マツダが必要に迫られた、長安とのパートナーシップ 航続は552kmか479km 高級感ある内装 リニアではないアクセルの反応 ブランドらしい動的特性とは呼びにくい UK編集部が試乗

必要に迫られた中国のパートナーシップ

マツダの新しい電動サルーン、6eは、必要に迫られたモデルといえる。多くの人は、MX-5(ロードスター)や手頃な大きさのハッチバックの存続を希望している。直列6気筒ディーゼルターボの、スタイリッシュなSUVも。

しかし欧州を中心に、世界はそれを制限する。BMWならターボエンジンを残しつつ、プラグイン・ハイブリッドにバッテリーEV、水素燃料EVと、多様な手段で変化へ構えられる。対してマツダの規模では、それは難しい。

マツダ6e タクミ・プラス(欧州仕様)
マツダ6e タクミ・プラス(欧州仕様)

中型クロスオーバーの、MX-30 EVが先行してはいる。とはいえ、見た目は魅力的だとしても、競争力は高くない。

そこでマツダが選んだ手段は、中国のパートナー、長安(チャンアン)汽車との提携。同社が抱えるブランド、ディーパルの電動サルーン、SL03の転用だった。

航続は552kmか479km シングルの後輪駆動

スタイリングは、ボンネットが長くルーフラインが滑らかで、マツダのイメージへ合致する印象。SL03の存在を知らなければ、最初から同社のサルーンとして開発されたと受け止めても、不思議ではないと思う。ちゃんと、6の後継モデルに見える。

シンプルなフロントバンパーと、切れ長のヘッドライトが精悍。トランクリッドには、展開式のスポイラーが載る。丸いテールライトは、FD型のRX-7を彷彿とさせる。

マツダ6e タクミ・プラス(欧州仕様)
マツダ6e タクミ・プラス(欧州仕様)

駆動用バッテリーは、グロス値でNMCセルの80kWhか、LFPセルの68.8kWhという2種類。航続距離は、最長552kmか479kmがうたわれる。ところが急速充電は、90kWに対して165kWと、小容量の方が速い。

駆動用モーターはシングルで、後輪駆動。最高出力は前者が244psで、後者が258psと、ここでもバッテリーの大きさと逆転している。

高級感ある内装 中国的なインターフェイス

フレームレスのドアを開くと、スタイリングと裏腹に、インテリアは従来のマツダらしくない。シンプルな造形のダッシュボードに、大きなタッチモニターが据えられ、押し心地の良いハードボタンは少ない。新世代のCX-5も、同様のデザインテイストだが。

試乗車のタクミ・プラス・グレードの場合、キャラメル・カラーのレザーとスウェードが贅沢に用いられ、SL03との差別化に成功している。ひとつ下のタクミ・グレードでも、ベージュかブラックの合皮が用いられ、高級感は低くない。

マツダ6e タクミ・プラス(欧州仕様)
マツダ6e タクミ・プラス(欧州仕様)

マツダが好むトラッドなフォントは、要所要所で見つけられるが、タッチモニターのインターフェイスは中国的。アイコンやウィジェットが、階層分けされずに散りばめられ、運転中の操作は少々難しい。安っぽさも滲む。

それでも、画面下部に常時表示される、エアコンの操作メニューは好ましい。アップル・カープレイにも対応する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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